日本大百科全書(ニッポニカ) 「テモテ書」の意味・わかりやすい解説
テモテ書
てもてしょ
The Epistles to Timothy
『新約聖書』の「牧会書簡」に属する手紙。「テモテへの手紙」とよばれ、第1、第2の2通からなる。差出人は使徒パウロ、受取人は弟子テモテとなっているが、用語ならびに文体上、これをパウロの手紙とすることは困難である。テモテは、ガラテヤ地方の出身で、父はギリシア人、母はキリスト教に改宗したユダヤ人であったことが知られている。しばしばパウロの伝道旅行に同行し、ピリピ、テサロニケ、コリント、エペソ(エフェソス)をはじめ、パウロのエルサレム訪問にも同行した(「使徒行伝」20章四節)。執筆年代は1世紀末か2世紀初めとみられるが、部分的にパウロの手記などを素材として使用した痕跡(こんせき)がある。教会を混乱に陥れる偽教師を徹底的に排撃し、正しい信仰にたって伝道者としての業に励むべきことを勧めている。
[山形孝夫]