改訂新版 世界大百科事典 「ディオニュシア祭」の意味・わかりやすい解説
ディオニュシア祭 (ディオニュシアさい)
Dionysia
古代ギリシアの祭典。祭神はディオニュソスで,古い陽気でエロティックな農民の祭りであったが,悲劇や喜劇の競演が催されるようになったため,文化史上重要な役割を果たした。アテナイには,この名で呼ばれる祭典が三つあった。第1に,古くからアッティカの村々で祝われていたものがあり,巨大な男根(ファロス)を掲げ持っての行列,無礼講的な儀式などが行われた。第2は,これら村々の祭りの一つ,エレウテライEleutherai村のものが僭主ペイシストラトスによりアテナイ市内へ移され,アクロポリス南東麓に神殿も建てられた。これは〈大ディオニュシア〉と呼ばれ,毎年エラフェボリオン月(3月末ころ)5日間にわたって盛大に祝われ,前6世紀後半から悲劇,前5世紀初頭から喜劇の競演が始められ,劇場も整備されていった。第3に,〈レナイアLēnaia〉とも呼ばれるディオニュシアがあり,ガメリオン月の12日(1月末ころ)に市内で祝われ,喜劇や悲劇が上演された。やがて他の多くの都市へも,劇の競演を伴うディオニュシア祭が普及してゆく。
執筆者:藤縄 謙三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報