ディオニュソス(英語表記)Dionysos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ディオニュソス」の意味・わかりやすい解説

ディオニュソス
Dionysos

別名をバッカスともいう,ギリシア神話の酒神。ゼウステーベの王女セメレの子だが,母がヘラ奸計にはめられ,ゼウスに雷神の正体を示すよう強要して,その熱によって妊娠中に焼殺されてしまったため,ゼウスによって母体から取出され,父神のまたの内に縫込められ,月が満ちるとそこから出されてセメレの姉妹のイノに預けられたが,イノもヘラによって発狂させられたので,ゼウスは彼をニュサという土地に移し,ニンフたちに養育させた。成長すると,シレノスサチュロスたち,および狂信的な信女の群れを従え,世界中にぶどうの栽培を広め,女性の信者を狂気に陥れ,山野で乱舞させ法悦を体験させるディオニュソス教を広めて回った。最後には冥府に行き,そこから母を上界に連れ戻して,母子ともにオリュンポスの神々の仲間入りをし,テセウスによってナクソス島に置去りにされたアリアドネを妻にめとって,彼女も女神の仲間入りをさせた。ディオニュソスの祭祀は,アテネではギリシア劇を発生させ,またオルフェウス教と結びついて,ヘレニズム時代に流行する密儀宗教一つとなり,初期キリスト教ともさまざまなかかわり合いをもつなど,文化史的にきわめて重要な役割を果した。

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