…西海岸の海食崖は雄大で,瀬々野海岸は奇岩で知られる。毎年大晦日の夜に正月の神トシドンが子どもたちに丸餅(年玉)を配る伝統行事トシドンが行われる。瀬尾の自生ヘゴは国の天然記念物に指定されている。…
…ただ単なる下賜の品ではなく,年神からの賜物とする民俗学的解釈が有力である。正月鏡餅のほかに数多くの小餅をつくり家族の一人一人に配分したり,人数分の餅を神棚に上げておく風は各地にあり,鹿児島の甑(こしき)島では,〈トシドン(年殿)〉という年神に扮した村人が元朝各家を訪れ子どもらに配る丸餅を年玉と呼ぶ。出雲の海岸部では,大晦日に年神が年玉を投げつけるのでいくら隠れても年を取るのを免れないなどという。…
…そうした餅を人間が儀礼食として食べるということは,神の霊力を体内に鎮め,生命力を再生・補強することであった。新年の年玉(としだま)は年魂であり,昔は餅を各人に授けて年をとらせる習俗が各地にあったが,鹿児島県の甑島(こしきじま)では現在も新年の夜にトシドンという神が各家を訪れて餅を授け,その餅をトシダマといっている。年の改まった新年にはとくに稲霊によって生命を再生させるために,餅に対する期待が強かったのである。…
…日本の来訪神には三つの形態がある。ひとつは仮面仮装した異形の姿で来訪するものであって,秋田のナマハゲ,能登のアマメハギ,三陸のナモミ,ヒガタタクリ,甑島(こしきじま)のトシドン,吐噶喇列島悪石島のボセ,宮古のパーント,八重山のアンガマ,アカマタ・クロマタ,ミルク(弥勒),マユンガナシ,フサマラーなどがある。仮面仮装する者の多くは若者であり,また特別の資格を備えた村人である。…
※「としどん」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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