日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリンギト」の意味・わかりやすい解説
トリンギト
とりんぎと
Tlingit
北アメリカ北西海岸の先住民集団(アメリカ・インディアン)の一つ。アラスカ南東部のヤクタト湾からケープ・フォックスに至る太平洋沿岸と島々に、14の地域集団に分かれて住む漁労狩猟採集民。銛(もり)、わな、網でサケ、マスなどの魚類をとり、アザラシ、イルカなどの海獣を狩り、貝類や植物を採集する。籠(かご)細工、毛織りのほか、木工芸、木彫に優れ、木で家、カヌー、家具、食器などをつくり、とくにみごとなトーテムポールは有名。よい漁場の近くで波の静かな湾に集落をつくるが、そこに住むのは主として冬で、夏には各地に分散して漁業と狩猟を行う。出自は母系で、四つの母系氏族があり、氏族は半族組織を構成する。たいてい、母系血縁集団が集落を形成し、首長をもち、独立の政治的単位であった。ほかの北西インディアンと同じく、競争的な贈答交換ポトラッチを行う。トリンギト語はナディネ語族アサバスカ語派に属する。人口は1万4417(1990)。
[板橋作美]