海獣(読み)カイジュウ(その他表記)marine mammals

デジタル大辞泉 「海獣」の意味・読み・例文・類語

かい‐じゅう〔‐ジウ〕【海獣】

海にすむ哺乳類総称。最も海中生活に適応したほかカイギュウオットセイアザラシラッコなど。
[類語]けものけだもの獣類野獣動物じゅう畜類畜生百獣鳥獣禽獣きんじゅうアニマル四つ足猛獣珍獣

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精選版 日本国語大辞典 「海獣」の意味・読み・例文・類語

かい‐じゅう‥ジウ【海獣】

  1. 〘 名詞 〙 海にすむ哺乳類の総称。四肢がひれ状であるなど海中生活に必要な形態や機能を備える、鯨類(クジライルカ)、食肉目鰭脚(ききゃく)類(アザラシ・オットセイ・トドなど)、海牛類ジュゴンマナティー)をいう。
    1. [初出の実例]「中には甚(いと)(あやし)き海獣の類なども寄来て」(出典:志都の岩屋講本(1811)上)
    2. [その他の文献]〔宋史‐五行志・一・下〕

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改訂新版 世界大百科事典 「海獣」の意味・わかりやすい解説

海獣 (かいじゅう)
marine mammals

海洋を生活域とする,いわゆる海生哺乳類の総称。基本的には陸上動物としての生活に適した哺乳類の特徴(肺呼吸胎生など)を備えながら,水中生活に二次的に適応した動物群。水中生活への適応の程度は,種類によってさまざまで,クジラ類のように,水中生活に高度に特殊化した魚型の体型をもつものから,ラッコやホッキョクグマのように,水中生活者としての進化史が浅く,陸上動物とあまり変わらない体型をもつものまでが含まれる。生活時間の多く,あるいはすべてを水域で過ごし,食物のほとんどすべてを水域から得ているが,アシカ,アザラシのように子の水中での運動能力が十分でないことから,繁殖と育児は陸に上がって行う必要のあるものがある。これらの種では特殊な社会関係が発達する。系統的には哺乳類のさまざまな分類群に属する動物を含み,カイギュウ目のマナティージュゴン,食肉目のアシカアザラシセイウチラッコホッキョクグマ(水中生活への適応の程度が低く,海獣として扱われないこともある),それにクジラ目のイルカクジラ類がある。

 一般に紡錘形の体とひれ状に変化した四肢,あるいは尾をもつ。陸上動物では,首は地表の食物や水を摂取する必要から四肢の長さとほぼ比例するが,海獣ではこの関係が失われるため,ごく短いか外観上消失している。高度の遊泳能力をもつ種では,強力で動揺の少ない推進力を得る必要から,体の後端部に位置する後肢,あるいは尾が推進器官に変形し,前肢は体を安定に保つための器官となっている。水中では重力に対して四肢で体を保持する必要がなく,体温保持のうえで体が小さなことが不利に働くことから,一般に陸上動物に比べて大型である。最大種のシロナガスクジラでは,体長30m,体重136tに達し,最小種のラッコでも体長1~1.2m,体重27~37kgある。体は,アザラシ,ラッコのように毛皮として優れた上質の毛で包まれているか,あるいは逆にクジラ類のように無毛で裸出する。食性は,海草などの植物を食べるカイギュウ目の種を除きいずれの種も動物食である。

 おもな食物である魚類を捕食する必要から,多くの種で歯は先端のとがった単純な形に変化し,一部の種では数も増えている。ただしヒゲクジラ類などのろ過摂食者では歯は消失している。鼻孔と耳孔は水中では閉じることができ,前者は水中生活に特殊化したクジラ類などでは頭頂部に移動する。目は,カイギュウ,アザラシなどの水中生活への特殊化が中間的な段階にあるものでは頭頂部に移動する傾向が認められるが,クジラ類などになると再び頭部の側方に下降する。しかし,水中では視界が陸上に比べて制限されることが多く,感覚器官としての視覚の果たす役割は少なくなる傾向があり,カワイルカ類などは視覚を用いない。一方,聴覚はよく発達し,イルカ類などでは音響定位の能力を進化させている。

 海獣は海洋生態系の中で捕食者として最高位にあって重要な位置を占めているが,古くから毛皮獣,あるいは食物資源として大量に捕獲され,近年における生息域の破壊もあって絶滅の危機に瀕(ひん)している種も多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「海獣」の意味・わかりやすい解説

海獣
かいじゅう

海にすむ哺乳(ほにゅう)類の総称で、クジラ目、海牛目、鰭脚目(ききゃくもく)、デスモスチルス目、食肉目イタチ科の一部が含まれる。海獣には終生陸にあがらないものと、少なくとも繁殖期には陸にあがるものとがある。前者には、クジラ、イルカなどのクジラ目約76種と、有蹄(ゆうてい)類の先祖(顆節(かせつ)類という絶滅動物)から分かれ出たと推定されるジュゴン、マナティーなどの海牛目約5種とがある。一方、後者には、食肉類から分かれ出たアシカ、オットセイ、トド、セイウチ、アザラシなどの鰭脚目約34種、海牛目に似るがりっぱな後肢のあるデスモスチルス目(絶滅)、食肉目イタチ科のラッコ、一部のカワウソ、1860年ごろ絶滅した北アメリカ(メーン州)のウミミンクなどが含まれる。

 第三紀始新世下部(前期)に出現したクジラ目はもっとも高度に海生に適応していて、後肢がなく、尾がひれに変わり、口の周りを除いて毛がない。始新世中部(中期)に出現した海牛目は海生への適応度がやや低く、体に毛がまばらに生え、前肢は手根部が可動性で、ときにつめを備えている。海牛目によく似たデスモスチルス目、および鰭脚目ははるかあとの中新世に現れたもので、後者は体に毛を密に生じ、後肢がひれになっている。イタチ科の海獣はさらに遅く海に進出したものと思われる。

[今泉吉典]

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普及版 字通 「海獣」の読み・字形・画数・意味

【海獣】かいじゆう

海の獣。

字通「海」の項目を見る

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栄養・生化学辞典 「海獣」の解説

海獣

 セイウチ,アザラシ,トド,アシカ,ラッコのように哺乳類で海にすむもの.普通クジラは含めない.

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ダイビング用語集 「海獣」の解説

海獣

クジラ、イルカ、アシカ、シャチ、アザラシといった海洋哺乳類の別称。

出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報

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