木彫(読み)きぼり

精選版 日本国語大辞典 「木彫」の意味・読み・例文・類語

き‐ぼり【木彫】

〘名〙 木材材料にして、形や模様を彫ること。また、そのもの。もくちょう。
読本椿説弓張月(1807‐11)残「木偶(キボリ)の随身采色剥(はげ)て釜より出たる餓鬼の似(ごと)く」
カールスバートにて(1967)〈柏原兵三〉「豪華な木彫が施されてある時代がかった衣裳箪笥」

もく‐ちょう ‥テウ【木彫】

〘名〙 木材をつかった彫刻。木造彫刻。きぼり。
※続珍太郎日記(1921)〈佐々木邦〉一「丸山君も天の邪鬼だから奈良朝の木彫(モクテウ)ぐらゐやり兼ねまいね」

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デジタル大辞泉 「木彫」の意味・読み・例文・類語

き‐ぼり【木彫(り)】

木材を彫って形・模様などを作ること。また、そのもの。もくちょう。

もく‐ちょう〔‐テウ〕【木彫】

木材に彫刻すること。また、その彫刻したもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木彫」の意味・わかりやすい解説

木彫
もくちょう

木造彫刻の略で、牙彫(げちょう)などに対する語。日本の彫刻の大部分は木彫で、材の特性をよく生かし、その種類も非常に多い。飛鳥(あすか)時代にはほとんどクスノキが用いられ、特殊なものにアカマツ(広隆寺弥勒菩薩(みろくぼさつ)像)などが用いられた。奈良時代には木彫は少ないが、平安時代に入って、木彫が主流になりヒノキがおもに用いられた。奈良時代の伎楽(ぎがく)面、平安時代の舞楽面にはキリがおもに用いられたが、これは軽さを必要としたためであろう。

 近来行われる趣味的制作は、「木彫り」とよび、専門家の木彫と区別している。第二次世界大戦後、物資の破壊と不足、男手の喪失から、婦人が実用と趣味とから木彫りを試み、最近は手芸として、各地に「木彫り教室」が設けられるに至った。

[岡登貞治]

木彫り

木彫りを始めるには、まず素材とする木を選ばなければならない。そのために、実用品をつくるのか、鑑賞品をつくるのか、よく考えて、木を選ぶことである。また、平面的な盆のようなものをつくるのか、立体的な立像、パイプなどのようなものを彫るのかによっても木の質が違ってくる。次に、図案を木につけるには、〔1〕直接木にデザインする方法、〔2〕型紙を使った捺染(なっせん)法、〔3〕カーボン紙を使う方法、などがある。

 彫りに使う用具も、平面か立体かで、それぞれ違う刀や糸鋸(いとのこぎり)を使う。仕上げには、木の材質そのものの味を生かす一刀彫りのような素朴なものから、日光東照宮の陽明門のような極彩色のものなどに使う、ラッカー、漆、顔料、最近では夜光塗料などまである。素材にも、合板材が種々出回り、仕上げ機も研究が進み発売されている。結局、一にアイデア、二にセンス、三に技術と、一つ一つ慎重に行うことが、よい作品を生むこつである。

[秋山光男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木彫」の意味・わかりやすい解説

木彫
もくちょう
wood carving

装飾または美的な目的のために,鑿 (のみ) などの手工具で木を彫り込んで作った丸彫および浮彫の彫刻。原始時代から現代にいたるまで全世界各地で行われてきたもので,特にアフリカの木彫作品は現代の芸術作品にも多大の影響を与え,また中世ヨーロッパにおける聖堂建築の装飾,聖像などにすぐれた作例がみられる。木に模様を刻む木彫作品と,木から形を作り出す木製彫塑の2種類がある。日本では主として仏像の制作に用いられ,材料にはくす,けやき,かつら,かや,ひのき,松,くりなどが使われ,平安時代以前は1本の木から彫出す一木造が多かったが,その後寄木造法が完成し,ほとんど寄木造で造像された。

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世界大百科事典 第2版 「木彫」の意味・わかりやすい解説

もくちょう【木彫 wood carving】

木を素材とした彫刻,浮彫。木材は,石材,テラコッタ,ブロンズ(青銅)などとともにもっとも一般的な彫刻用素材であり,木材の産出する地域では手に入れやすいため,丸彫彫刻のみならず,建築,家具などの装飾や工芸品の素材としても多用された。ただ,木材は湿気や火に弱く,石材や金属などに比べて長期の保存に適さないという欠点をもっている。 木彫には,のみ,小刀,錐など,各種の道具類を必要とするが,石彫に比較すれば加工は容易である。

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普及版 字通 「木彫」の読み・字形・画数・意味

【木彫】もくちよう

木彫り。

字通「木」の項目を見る

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