日本大百科全書(ニッポニカ) 「どら焼き」の意味・わかりやすい解説
どら焼き
どらやき
焼き菓子の一種。形が銅鑼(どら)(ゴングgong)に似ているのでこの名がある。鶏卵に砂糖を加えてよくかき混ぜ、小麦粉に膨張剤を加えたものをふるい込んで、水でどろどろに溶き、種汁をつくる。この種汁を平鍋(ひらなべ)に円型にたらし、焼き目がついたら裏返して小豆(あずき)のつぶし餡(あん)をのせ、別に用意した同形の焼き皮をかぶせる。この手法は江戸・日本橋大伝馬町の老舗(しにせ)梅花亭が明治年間に創案したが、梅花亭のものは青えんどうのつぶし餡を用いるのが特徴。ふっくらとした形状が奈良の三笠山(みかさやま)に見立てられ、いつしか三笠山がどら焼きの一般的な菓名となった。形状からどら焼き、三笠山といわれる今日のどら焼きに対し、江戸時代のどら焼きは銅鑼を焼き鍋に用いた菓子であった。江戸・麹町(こうじまち)の助惣(すけそう)を元祖とする当時のどら焼きは、小麦粉を薄く溶いて鉄板に丸く流し、餡を入れて皮を四角に畳んだもので、皮は薄く形状からいえば金鍔(きんつば)であった。
[沢 史生]