ドルパド(その他表記)dhrupad[ヒンデイー]

改訂新版 世界大百科事典 「ドルパド」の意味・わかりやすい解説

ドルパド
dhrupad[ヒンデイー]

インドの声楽曲の一形式。古くはドルバパダdhruvapadaといわれた。15~16世紀にかけて宮廷で発展した。芸術性を追究するうえで,精神的にも体力的にも最も厳しい音楽であるといわれるように,荘重であり,宗教的行事を思わせる。創始者は北インドのラージャー・マーン・シングRājā Mān Singh(1486-1525)に帰せられるが,起源は12世紀ころに盛んであったプラバンダprabandha(楽曲)に求められる。これは4部からなる大形式で,第3部分はドルバdhruva(〈永遠の〉の意)と名付けられており,これと〈語句〉を意味するパダpadaとの合成語が,ヒンディー語風に発音されてドルパドとなる。この形式はアクバル皇帝の時代に,聖者として名高いスワーミー・ハリダースとその弟子ターン・センによって完成され,現在に及んでいる。形式の前半はアーラープで,拍子と詩句とがなく,ラーガを十分に提示する部分で,順次に声域を広め,速度を増す。後半では詩句に基づくメロディが,ターラにのって歌われ,装飾を加えつつ繰り返し歌われる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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世界大百科事典(旧版)内のドルパドの言及

【インド音楽】より

…この形式はビーナー,バイオリン,笛などによっても独奏され,打楽器はムリダンガという,古代の文献に記されている太鼓が用いられる。北方の声楽の一形式であるドルパドは,16世紀にアクバルの宮廷音楽家ターン・センTān Senによって現在の様式に完成されたといわれる。よりポピュラーなカヤールは,擦弦楽器のサーランギーの伴奏がつき,両者の掛合いはまた即興の妙技である。…

※「ドルパド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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