日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナンヨウチヌ」の意味・わかりやすい解説
ナンヨウチヌ
なんようちぬ / 南洋茅渟
Pacific seabream
[学] Acanthopagrus pacificus
硬骨魚綱スズキ目タイ科ヘダイ亜科に属する海水魚。西表島(いりおもてじま)、台湾、フィリピン、シンガポール、マレーシアなど東南アジアからオーストラリア北岸・北東岸の沿岸にまで分布する。キチヌに似るが、本種はキチヌに比べ体高が高く、腹びれと臀(しり)びれが暗灰色である点が異なる。胸びれはやや長く、眼前部の外郭は急峻(きゅうしゅん)である。背びれ棘(きょく)部中央下の上方横列鱗(おうれつりん)数は4枚。両顎(りょうがく)の臼歯(きゅうし)は3列以上。体長約50センチメートル。河口域や沿岸の内湾域に多く生息する。東南アジアでは重要な食用魚であるが、漁獲量はあまり多くない。インド洋および紅海産のゴールドシルク・シーブリームA.berdaに似るが、ナンヨウチヌは上顎の後部上方の第1~2眼下骨の腹縁に明瞭(めいりょう)なくぼみがないこと(体長35センチメートル以下の個体)、鰓耙(さいは)が少なく13~17本(最頻値は15本)であること、体高は低く体長の平均45%であること、臀びれは3棘8軟条であることなどで区別できる。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年9月19日]