改訂新版 世界大百科事典 「ナーヤカ」の意味・わかりやすい解説
ナーヤカ
nāyaka
インドにおける,おそらくはサンスクリットを起源とする〈特定権限〉〈称号〉〈官職名〉の総称。後には人名にも用いられた。古くは《アルタシャーストラ》に現れ,〈10ヵ村の頭〉を意味した。ビジャヤナガル王国時代の史料に頻出し,〈ナードゥ(郡)の支配者〉を示す称号,ダンダナーヤカとよばれる軍事・財務長官の官職名,あるいは徴税・軍事権を与えられた地方領主層としてのアマラナーヤカなど,さまざまの性格をもつナーヤカが存在したと考えられる。とくに16世紀後半,南インドの各地で地方勢力の独立化が進むと,タンジョール,イッケリ,ジンジー,マドゥラなどでは,その地に封じられていたナーヤカによる半独立領国体制が成立した。さらに,ナーヤカの下には村・郡段階での徴税・軍事権をもったパーライヤッカーランPalaiyakkāran(あるいはポリガールPoligār)なる土着的支配層も台頭した。ナーヤカを〈封建制〉を支えた〈領主〉層とは必ずしも規定できない。
執筆者:重松 伸司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報