アルタ・シャーストラ(読み)あるたしゃーすとら(英語表記)Artha śāstra

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルタ・シャーストラ」の意味・わかりやすい解説

アルタ・シャーストラ
あるたしゃーすとら
Artha śāstra

古代インドにおける政治や経済などを中心とした学術総称実利論と訳される。もっとも代表的な実利文献は、マウリヤ朝のチャンドラグプタ王に仕えた宰相カウティリヤの作といわれるもの、すなわち『カウティリヤ実利論』である。本書は全編15巻より構成され、その内容としては君主に必要な学問や教育、行政官の義務、国家秩序維持のための司法規定、官吏の服務規定、国家の構成要素、外交政策、軍事などを順次扱い、全体として国家統治に関する理念を示そうとする。一種の理想国家論ともよびうる本書の諸規定、諸規範が、現実的にどれほどの法的効力をもっていたかは疑問であるとしても、古代インド、とりわけマウリヤ朝時代の社会的、政治的状況を研究するうえで、きわめて重要な資料を提供する文献であろうことは確かである。

[矢島道彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルタ・シャーストラ」の意味・わかりやすい解説

アルタシャーストラ
Arthaśāstra

サンスクリット語で「実利の学」という意味。マウリヤ朝のチャンドラグプタ王 (在位前 317頃~296頃) の宰相カウティリヤ Kauṭilyaに帰せられる『カウティリヤ実利論』 Kauṭilīya-Arthaśāstraのみが有名で現存している。現存テキストはおそらく3世紀頃に編纂されたとされるが,カウティリヤ自身の言葉もかなり伝えられているという。同書は政治,外交,軍事の指導書で,「国王即国家」の主張に基づいている。いかにして領土を拡張し,国王の利益を増大するか,ということが作者の最大関心事であった。しばしばマキアベリの『君主論』と対比される。

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