改訂新版 世界大百科事典 の解説
ニッケルジメチルグリオキシム
nickel dimethylglyoxime
化学式[Ni(C4H7N2O2)2]。ジメチルグリオキシムが水素イオンを1個失ってできたジメチルグリオキシマトイオンが2個,それぞれ二つの窒素でニッケル(Ⅱ)に配位しているキレート化合物。正式名ビス(ジメチルグリオキシマト)ニッケル(Ⅱ)。酢酸ニッケル(Ⅱ)およびジメチルグリオキシムの熱飽和エチルアルコール溶液を混合すると得られる。赤色針状結晶で,斜方晶系。250℃で昇華,310℃で分解する。構造は図のような4個の窒素による平面正方形型で,二つのジメチルグリオキシマト配位子は水素結合で結合している。
結晶中ではこの平面が平行に積み重なって連なり,Ni-Ni間に結合があるとされている。水,酢酸,アンモニア水などに不溶。希塩酸,水酸化ナトリウム水溶液に可溶。クロロホルム,エチルアルコール,ベンゼン,氷酢酸,ピリジンなどに微溶,ニッケルの定量分析はこのキレートの生成を利用したものである。
執筆者:近藤 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報