金属イオン用分析試薬の一つ。ジアセチルジオキシムともいう。無色の粉末性結晶。水には不溶、エタノール(エチルアルコール)、エーテルには溶ける。1905年にチュガエフL. Chugaev(生没年未詳)により、ニッケルイオンの比色定性、定量分析に用いられた。有機試薬を分析に用いる先駆となった化合物である。ニッケル、コバルト、銅、鉄などの検出および比色定量用、パラジウムの検出および沈殿用の試薬として広く使われている。たとえば、ニッケルイオンはジメチルグリオキシムと1対2の割合で結合して、紅色の水に不溶な錯体をつくる。この錯体はクロロホルムにはよく溶けるので、クロロホルムの溶液としてニッケルの比色定量に利用する。
[務台 潔]
ニッケルイオンの検出と定量に使用される代表的な分析用有機試薬。2,3-ブタンジオンジオキシムまたはジアセチルジオキシムにあたる。融点240~241℃。ジアセチルモノオキシムとヒドロキシルアミンから得られる無色結晶。エチルアルコールと水の混合溶媒からは三斜晶系の結晶が得られる。水に不溶。アルコール,エーテル,ピリジン,アセトンに可溶。希薄溶液からでもニッケルとは鮮やかな深紅色の沈殿を生じるので重量分析が容易にできる。またこの性質はコバルトや他の金属からの分離にも利用される。さらにスズ,ロジウム,イリジウムからのパラジウムの分離にも利用されるほか,鉄(Ⅱ)の比色定量にも使用される。ビスマスイオンとは明るい黄色沈殿を形成するので,ビスマスの検出にも使用される。試薬の廃棄は燃焼法による。
執筆者:宮本 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
diacetyl dioxime.C4H8N2O2(116.12).亜硝酸エチルとエチルメチルケトンから得られるビアセチルモノオキシムと,ヒドロキシルアミンから合成される.無色の針状あるいは粉末状結晶.融点238~240 ℃.エタノール,エーテルに易溶,水に不溶.ニッケルの沈殿試薬として歴史的に有名な試薬である.ニッケルと赤色のニッケル錯塩Ni(C4H7N2O2)2をつくり,この赤色はニッケルの比色定量にも利用される.ほかにパラジウム,鉄,銅とも錯塩をつくり,有色の沈殿を生成するので定量および定性試薬に用いられる.このような性質は,ベンジルジオキシム(無色の葉状結晶.融点237 ℃(分解))など,ほかのα-ジオキシム類にも共通している.シクロヘキサン-1,2-ジオン=ジオキシムもニッケルの定量試薬に用いられる.[CAS 95-45-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新