日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナヒゲウツボ」の意味・わかりやすい解説
ハナヒゲウツボ
はなひげうつぼ / 鼻鬚鱓
ribbon moray
[学] Rhinomuraena quaesita
硬骨魚綱ウナギ目ウツボ科に属する海水魚。和歌山県串本(くしもと)町、高知県柏島(かしわじま)付近の太平洋沿岸、屋久島(やくしま)、小笠原(おがさわら)諸島、南西諸島、南大東島、台湾南部、ニュー・カレドニアなど太平洋・インド洋に分布する。体はきわめて細長く、側扁(そくへん)し、リボン状である。脊椎骨(せきついこつ)数は著しく多くて270~286。吻(ふん)はとがる。前鼻孔(ぜんびこう)は吻端付近に位置し、広い葉状の皮弁(皮質突起)をもつ。上顎(じょうがく)の先端に1本、下顎の先端に3本の肉質の細長い突起がある。背びれと臀(しり)びれはよく発達する。雄から雌に雄性先熟型の性転換をするので、それに伴って体色も変化する。体は若魚では黒色であるが、雄の青色を経て雌の黄色に変わる。しかし、どの成長過程においても背びれは黄色で、普通は臀びれは黒っぽく、両ひれとも白い縁をもつ。稚魚では下顎に1本の黄色の縞(しま)模様があり、成魚では上下両顎と鰓孔(さいこう)は黄色である。サンゴ礁の浅所の砂や瓦礫(がれき)の中に隠れているが、ときどき頭部や体の前半分ほどを出している。おもに小魚を食べる。最大全長は約120センチメートルに達する。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]