日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナメイワシ」の意味・わかりやすい解説
ハナメイワシ
はなめいわし / 花目鰯
shining tubeshoulder
[学] Sagamichthys abei
硬骨魚綱ニギス目ハナメイワシ科の深海魚。日本列島の太平洋岸沖、オホーツク海、北太平洋から東部太平洋に分布する。胸びれの上方に管状の突起があることが本科の特徴である。体は細長くて、側扁(そくへん)する。吻(ふん)は鈍くて丸い。口は頭の前端に開き、大きくて目の後方まで開く。前上顎(がく)骨には小さい歯が1列に並び、主上顎骨には長く櫛(くし)状の歯が露出する。体は小さい円鱗(えんりん)で覆われる。側線は体の中央部を直走する。体の腹面を横切る帯状の発光器が3個ある。円形の発光器が、腹びれの直前、臀(しり)びれの起部の前、および臀びれ基底の後部にそれぞれ左右1対、尾びれ下部の基底に1個の発光器がある。体は全体に黒色、若魚では淡青灰色。体長は35センチメートルほどになる。水深200~1500メートルの中深層域にすむ。若魚は夜間に餌(えさ)を求めて水深200メートルまで浮上する。学名のSagamichthysは相模(さがみ)湾の魚を、abeiは日本の魚類学者の阿部宗明(あべときはる)(1911―1996)博士に由来する。
[尼岡邦夫]