化学辞典 第2版 「ハブ毒」の解説
ハブ毒
ハブドク
habu snake venom
クサリヘビ科Viperidae,マムシ亜科Crotalinae,毒ヘビハブ属Trimeresurusの毒腺でつくられ,毒牙(が)先端近くの開口から分泌される,黄色,透明,粘ちゅうな毒液.世界には31種類,わが国には3種類,1亜種のハブがいるが,普通,ハブ毒といえば,奄美諸島,沖縄島などに住む大型で危険なT.flavoviridisの毒液を真空または凍結乾燥したものをさす.原液は20~30%(w/w)の固形分,約0.2 g mL-1 のタンパク質を含む.LD50 4 mg/kg(マウス,静注),27 mg/kg(皮下)と小さいが,組織の壊死による被害が大きい.多くの酵素(L-アミノ酸オキシダーゼ,ホスファターゼ,プロテイナーゼなど)や種々の因子(溶血因子,壊死因子,出血因子,血液凝因阻害または促進因子など)を含んでおり,それらの諸性質が明らかにされつつある.ハブにかまれたときの治療には,免疫血清,予防にはトキソイドが有効である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報