開口(読み)かいこう

精選版 日本国語大辞典「開口」の解説

かい‐こう【開口】

〘名〙
① ものを言ったり、笑ったりするために、口を開くこと。また、ことばを発すること。
※蔭凉軒日録‐延徳二年(1490)九月六日「崇寿院主出堺庄支証案文破葉室公。愚先開口云。始末院主可白云々。院主丁寧説破」 〔荘子‐盗跖〕
② 儀式的な演能で「翁(おきな)」に続く脇能(わきのう)の初めに、ワキが出て新作の祝いの小謡を発声すること。また、その謡。現在の能楽では、一曲の最初の謡い出しをもいう。かいこ。くちあけ。
※習道書(1430)「先づ切初(さいしょ)に出て、開口(カイコウ)より、その題目のいはれを分明に云ひをさめて」
③ 製織の際、綜絖(そうこう)を上下に動かして、緯(よこいと)を打ち込みやすく杼道(ひみち)をつくること。

かい‐の‐くち【開口・貝かひ口・通かひ口】

〘名〙
和船の矢倉の左右側面に設ける出入口。近世の荷船では船体中央より艫(とも)寄りにあって、窓のような形状をしており、障子と戸で開閉される。軍船では総矢倉とするため、舳(おもて)寄りにも設ける場合が多く、両舷合わせて四か所とする。かよいのくち。〔日葡辞書(1603‐04)〕
② (貝口) ⇒かい(貝)の口

あ‐ぐち【開口】

〘名〙 (「あきくち(開口)」の変化した語)
足袋、襪(しとうず)などの足をはき入れる口。
② 上くちびるが縦に裂けている、発達障害による奇形。兎唇(としん)。〔温故知新書(1484)〕

かい‐こ【開口】

〘名〙 =かいこう(開口)
※風姿花伝(1400‐02頃)六「脇の申楽(さるがく)、ほんぜつ正しくて、かいこよりその謂(いは)れと、やがて人の知る如くならんずるらい歴を書くべし」

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デジタル大辞泉「開口」の解説

あ‐ぐち【開口】

《「あ(開)きくち(口)」の音変化》足袋・すね当て・などの、足を入れる口。

かい‐こう【開口】

口を開くこと。ものを言い始めること。
外に向かって開いていること。「開口部の多い部屋」

㋐能で、1曲の最初の謡いだしの部分。かいこ。
㋑中世の猿楽で、最初に登場して祝賀の意を含めたこっけいな文句を述べること。能の形成に伴い、まじめなものとなった。開口猿楽。
㋒中世の延年などの一芸で、こっけいな地口(じぐち)やしゃれを唱えたりする話芸的なもの。㋑を取り入れたものらしい。
㋓近世、幕府の大礼本願寺の礼能などの儀式的な演能で、脇能の初めにワキの役が新作の祝賀文句うこと。また、その謡(うたい)。

かい‐こ【開口】

かいこう(開口)2」に同じ。

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世界大百科事典 第2版「開口」の解説

かいこう【開口】

寺院の延年において演ぜられた,言葉を主体とした芸能。その実態をよく伝えるのが1544年(天文13)書写の《多武峰(とうのみね)延年詞章》の開口7編で,それによればまず仏法の功徳などが述べられたあと,一定の題材に沿った洒落秀句が比較的長く語られ,最後に延年の場に来臨した諸衆を祝福するという形になっている。頭尾の祝言はまじめなものだが,それにはさまれた洒落や秀句の部分は相当に滑稽なものである。たとえば7編中の第5〈開口名所山々相撲之事〉についてみると,〈よき相手に逢坂山の,しやつと寄て取らんとすれば,耳なしの山なれば,取手にはぐれて勝負をも決せずして入佐の山もあり,また,取られじとて足引の山もをかしきに,はや鳥羽の秋の山は時雨をも待たで勝つ()色みえた〉といった具合に綴られている。

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