トキソイド(読み)ときそいど(英語表記)toxoid

翻訳|toxoid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トキソイド」の意味・わかりやすい解説

トキソイド
ときそいど
toxoid

細菌の菌体外毒素ヘビ毒など生物の産生する毒素を、抗原性を損じないようにホルムアルデヒドで無毒化したもの。ジフテリア破傷風ハブ毒のトキソイドが実用化されている。細菌に対するワクチンに相当するもので、人体に注射すると毒素に対する抗体ができて、これらの毒素による傷害が現れなくなる。すなわち、ジフテリアや破傷風の予防、ハブにかまれたときの予防に用いられる。ジフテリアや破傷風に感染した場合の治療には、毒素による発症を防ぐために、毒素の中和作用の速い抗毒素が用いられる。抗毒素は、トキソイドをウマに注射して、抗体のできた血液から血清を分離して製する。

 ジフテリアおよび破傷風トキソイドは、それらの菌を培養し、培養液中に産生された毒素にホルマリンを加えて37℃に保存して無毒化し、精製するか精製した毒素にホルマリンを作用させてつくる。完全に無毒化したものを透析してホルマリンを除き、さらに毒素以外の成分を塩析法、有機溶媒による分画、クロマトグラフィー、電気泳動などの操作で除去し精製する。これに硫酸アルミニウム・カリウム液を加えて沈降させたのが沈降トキソイドで、効果が持続する。製品として、ジフテリアトキソイド、成人用沈降ジフテリアトキソイド、ジフテリア破傷風混合トキソイド、沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド、沈降破傷風トキソイド、沈降ハブトキソイドがある。

[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トキソイド」の意味・わかりやすい解説

トキソイド
toxoid

変性毒素ともいう。細菌毒素蛇毒などに化学的,物理的処理を加え,免疫原性を持続させたまま,その毒性を除去したもの。外毒素をつくる菌の培養液のろ液を放置しておくか,0.3~0.4%の割合でホルマリンを添加するとトキソイド化される。ジフテリアの活動免疫,破傷風の予防,ブドウ球菌による疾患の治療などに用いる。

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