ハマーサ(読み)はまーさ(その他表記)al-amāsah

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハマーサ」の意味・わかりやすい解説

ハマーサ
はまーさ
al-amāsah

9世紀に編集されたアラビア詩集で、「勇壮」の意。アブー・タンマームによるものと、ブフトリー(?―897)によるものとがあるが、とくに前者が有名。アブー・タンマーム自身も詩人として知られるが、彼はその時代までのアラブ詩人の諸作品を10巻にまとめ、その第一巻の題名「勇壮」が全巻書名となった。第二巻以下は、哀悼儀礼慕情非難、招客、性質、旅情、滑稽(こっけい)、女性叱責(しっせき)、の各巻で、およそ当時のアラブ人の心情をすべて表現しており、時代的にもイスラム以前からイスラム初期に及ぶ。これをモデルにブフトリーは同様にハマーサ詩集を編んだが、その文学的価値は劣る。

[内記良一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のハマーサの言及

【アラブ文学】より

…しかし今日では,作品や詩人の存在の真正さを全面的に否定するのは極論にすぎるという考えが支配的になっている。8世紀ころから,この時代の古詩はアラビア語の最古にして純粋なよりどころであり,コーランを理解するための用語の源であって,しかも古代アラブの歴史や生活を知るうえで不可欠のものであるなどの認識が深まり,《ムアッラカートMu‘allaqāt》《ムファッダリーヤートMufaḍḍalīyāt》《ハマーサal‐Ḥamāsa》《アガーニーal‐Aghānī》などと呼ばれる詩集が相次いで編さんされ,ジャーヒリーヤの古詩を今日に伝えることになった。なかでも《ムアッラカート》はこの時代を代表する7人の詩人のカシーダqaṣīda(長詩)を1編ずつおさめた詩集で,今日に至ってもなお踏襲されているアラブ定形長詩の手本をなすもので,ウムルー・アルカイスUmru’ al‐Qays(500‐540)がその頂点に立つ詩人である。…

※「ハマーサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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