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[アクション映画の前史]
《大列車強盗》以前にエジソンは,〈ピープショー〉と呼ばれたのぞき式の〈キネトスコープ〉で,アクロバット,レスリング,芸をする犬や猫や熊,闘鶏,ベリー・ダンス,空中ブランコ,拳銃の曲射ち,バッファロー・ビルの率いる〈ワイルド・ウェスト・ショー〉といった寄席やサーカスや珍しいスポーツの妙技(スタントstuntと総称され,ここからスタントマンの名が生まれる)を撮影して見せていた。1896年に演芸場でのスクリーン映写(バイタスコープvitascopeと呼ばれた)が始まると,同じショーを生の舞台で見慣れてきた観客は,当然これらの白黒で無声の60秒程度の映像に〈複製〉された出し物にあきたらず,むしろ舞台では見られないもの,すなわち一方ではナイアガラ瀑布(ばくふ)や突進している機関車といった自然や機械の驚異,他方では鍛冶屋や歯医者や床屋や中国人の洗濯屋といった近所の日常的光景,そしてもちろん時事的な話題(大統領の選挙演説など)をスクリーンで見たがった。こうした大衆の好みを反映した要素をすべてとり入れ,さらに映画のために演じられるスタント,すなわち危険なアクションを加味し,当時もっとも大衆の興味をひく事件だった西部の連続列車強盗を主題に作られたのが《大列車強盗》であった。…
…〈キネトスコープ〉が神戸に輸入されるのは同じ年の11月のことである。のぞき眼鏡式のキネトスコープに次いで,スクリーンに映写する活動写真シネマトグラフとバイタスコープが輸入されたのが翌97年。シネマトグラフには自動写真とか自動幻画(幻画は幻灯映画の略語),バイタスコープには蓄動射影といった訳語が当てられたこともあるが,結局は活動写真(あるいは活動大写真)という呼称が一般化した。…
※「バイタスコープ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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