日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブロードウェー」の意味・わかりやすい解説
ブロードウェー
ぶろーどうぇー
Broadway
アメリカ合衆国、ニューヨーク市マンハッタン島の南端を出発点に南東から北西に向けて斜めに同島を貫き、市の北限まで延びる大通りの呼称。沿道には南から北へ、金融街、市庁舎、ユニオン・スクエア、マディソン・スクエア、百貨店メーシーズ、そして「世界の交差点」タイムズ・スクエア、芸術の殿堂リンカーン・センター、コロンビア大学などがあり、ニューヨークでもっとも有名な街路の一つである。
しかしブロードウェーの名が世界的に有名なのは、劇場街としてである。劇場がブロードウェー周辺に集まりだしたのは18世紀のことで、その後南から北へというニューヨーク市の発展にあわせて徐々に劇場も北上し、20世紀初めにタイムズ・スクエア周辺に現在の大規模な劇場街ができあがった。最盛期は1920年代で、80軒ほどの劇場が林立し、夜もイルミネーションで光り輝き「ザ・グレート・ホワイト・ウェイ」とよばれ、名実ともにショービジネスの中心地となった。豪華なレビューやミュージカルが中心だが、質の高い台詞劇(せりふげき)もしばしば上演され、アメリカ演劇の中心的役割を担った。しかし第二次世界大戦後、商業主義への傾斜を強めたことから、それを批判するオフ・ブロードウェー演劇が1950年代初頭に登場し、1960年代にはさらに実験性を標榜(ひょうぼう)するオフ・オフ・ブロードウェーが登場した。また全米各地に地域演劇(リージョナル・シアター)も数多く誕生し、アメリカ演劇においてブロードウェーが占める地位は相対的に低下した。このため、過去の名作や海外の有名作品のショーケース(好見本)といわれることもあるが、ミュージカルの拠点として、また全米規模で生まれる上質な台詞劇の最終上演場所として、ブロードウェーは依然として機能し多くの観客を集めている。なお、ブロードウェーの劇場で実際にこの通りに面しているものは数少なく、多くはブロードウェーを挟む、東西は六番街から八番街、南北は41丁目から53丁目にかけて点在している。
[鳴海四郎・一ノ瀬和夫]
『大平和登著『ブロードウェイ』(1980・作品社)』▽『大平和登著『ブロードウェイ2』(1985・作品社)』▽『大平和登・荒井良雄著『ブロードウェイ!ブロードウェイ!』(1985・朝日新聞社)』▽『大平和登著『ブロードウェイの魅力』(丸善・1994)』▽『『週刊朝日百科 世界の文学42 南北アメリカⅡ――ブロードウェイと文学』(2000・朝日新聞社)』▽『P・D・ジトウィッツ著、斎藤英治訳『ブロードウェイミュージカルへの招待』(2001・英宝社)』▽『井上一馬著『ブロードウェイ・ミュージカル』(文春新書)』