バシレウス(その他表記)basileus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バシレウス」の意味・わかりやすい解説

バシレウス
basileus

古代ギリシアにおいて「王」を意味する語。ホメロスの詩に見出される王は共同体の指導者としての存在で,世襲制であった。すでにホメロスの詩において,王以外の有力者たちもバシレウスと呼ばれていることから,ここに貴族政への移行の状態をみることができる。アルカイック期,古典期には,王政はほとんどすべての地方で僭主政寡頭政,民主政に変っており,スパルタのみが例外であった。古典期アテネではおもに祭事に関する職務にたずさわるアルコンをさした。前4世紀には特にペルシア大王に対しバシレウスの語が用いられた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のバシレウスの言及

【アテネ】より

…メドンの血統をひく人々すなわちメドン家が以後,暗黒時代のアテナイを指導するが,その初期にすでに王政のあり方に重大な変化が生じていたらしい。同じく伝承によれば,このころ王権は三分されて,軍事指揮者としてのポレマルコスpolemarchos,政治の実権を握るアルコンの二つの職が設けられ,王(バシレウスbasileus)には祭祀にかかわる権限が残された。のちのアルコン職の起源をなすこの三つの役職は,当初メドン家によって占められ,任期も終身だったと伝えられるが,このような制度上の変化が,王権の縮小と在地の豪族たちの地位の向上につながったことは想像に難くない。…

【アルコン】より

…アテナイでは王政廃止後に終身職として設置された。やがて3名(バシレウス,ポレマルコス,首席アルコン)となり,任期10年となる。前683年には任期1年,その後テスモテタイ(法務官)6名が加えられ,全部で9名となる。…

【王】より

…(2)王をあらわす古典ギリシア語のbasileus,現代ギリシア語のbasiliasは,語源が不明で,先ギリシア時代にさかのぼると推定される。ビザンティン帝国ではバシレウスbasileusが皇帝の意味で用いられた。(3)古代アイスランド語のkonungr,古代英語のcyning,現代英語のking,現代ドイツ語のKönigなどの語幹kunは,たとえばゴート語kuniからも明らかなように,〈家系〉〈家族〉を意味する。…

【皇帝】より

…なお近代では,ピョートル大帝が,tsar’称号を廃して,代りに西方のimperatorを公式称号に採用したけれども,tsar’称号は依然として民間で存続した。(3)王を意味した古典ギリシア語バシレウスbasileusはビザンティン帝国ではローマ皇帝を指すようになり,かかるものとしてビザンティン皇帝がみずから帯びた。これは,〈ビザンティン帝国〉という名称は近代になって与えられた呼称にすぎず,〈ビザンティン帝国〉とよばれるものは,古代ローマ帝国の中世における連続体であり,みずからを〈ローマ帝国〉と考えていたことからの当然の帰結であった。…

【裁判】より

…これはこの種の争いに決着をつける裁判制度のあったことを推測させるものであるが,その内容はまったく不明である。ギリシア語で裁判はディケdikē(〈裁決〉〈正義〉の意)と呼ばれ,ホメロスでは軍事指揮者と祭祀主宰者を兼ねる王(バシレウスbasileus)が,裁判者の機能をも兼ねていた。殺人の賠償金の支払をめぐる争いを裁くため,民会agorēにおいて〈審き人istōr〉(〈知っている者〉の意)の職務を行っているのはこのような王であったにちがいない。…

※「バシレウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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