貴族政(読み)きぞくせい[こだいギリシア](その他表記)aristocracy of ancient Greece

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貴族政」の意味・わかりやすい解説

貴族政[古代ギリシア]
きぞくせい[こだいギリシア]
aristocracy of ancient Greece

主権貴族に属していた古代ギリシア政治形態。その由来が王と同じく神にいたると主張して,ポリス支配階級を形成していた貴族は,土地と家畜の所有者であり,おもに都市に住み,門地と富においてまさり,武勇にぬきんでていた。彼らは騎士階級を構成し,貴族の不文律と古い社会的・宗教的共同体 (フュレ〈部族〉,フラトリア〈兄弟団〉,ゲノス氏族〉) とによって結びついていた。その国家支配は評議会を通して行われ,長い間その権威は維持された。前8世紀以後,戦術の変化によって軍事力の主体が騎士から重装歩兵 (ホプリタイ ) に移り,商工業の発展により貴族以外の人々も富を得るようになると,貴族と同等の政治権力をもつ者も現れ,貴族政から寡頭制へと転換していった。しかし,貴族の道徳的規範と政治理念とは長い間ポリスを導いた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「貴族政」の解説

貴族政(制)
きぞくせい
aristocracy

一般的には君主政・民主政に対して,少数特権者の合議による政治形態
ギリシア・ローマにおいては,原始的王政が廃止されてから古代民主政の成立もしくは富裕市民の政治参加が行われるまでの間の,少数の貴族が権力を保持していた時代をいう。さらに特殊な意味で,ギリシアの政治形態の変遷を考察した歴史家ポリビオスは,悪しき少数者による政治は「寡頭 (かとう) 政」と呼び,善き少数者の政治を「貴族政」と呼んで区別した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「貴族政」の解説

貴族政(きぞくせい)
aristocracy

王がいないか無力で,上層の特定身分=貴族が政治を行う政治形態。ギリシアの国家論では君主政と民主政の間に位置し,元来は「優れたものの支配」を意味する。史上,古代ギリシア初期,共和政期ローマ,ヨーロッパ(特にイタリアの)中世都市国家などにしばしば現れたが,現在では精神論としてのみ問題となりうる。

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