アルコン(読み)あるこん(英語表記)archōn

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルコン」の意味・わかりやすい解説

アルコン
archōn

「指導者」「支配者」を意味し,古代ギリシアの多数のポリスにみられた最高官。アテネではアルコンの制度が前 682年に始って,王政が終ったとされる。前5~4世紀には紀年の名に使われる筆頭アルコン,軍事指揮官たるポレマルコス祭祀を扱うバシレウス (王) ,司法にあたる6人の法律記録官など9人のアルコンがいた。任期1年で再任できず,最初は名門から選ばれたが,ソロンのとき最富裕層に解放され,前 487/6年には第2の騎士級に広げられくじ引きになった。この頃から直接選挙で重任可能な将軍実権が移り,アルコンは司法官になり,しかも陪審裁判前の予備審査を行うにすぎなくなった。前 458/7年に選出は第3の農民級まで広げられ,アリストテレスの頃は事実上第4の労働者級の人もなれた。2重くじ引きになり,資格審査が設けられたりしたが徹底民主政下では重要性は非常に低下した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルコン」の意味・わかりやすい解説

アルコン
あるこん
archōn

「統治者」を意味するギリシア語で、広く役人一般をさすが、とくに貴族政成立以後のポリスの最高役人(団)の称号として用いられ、アテネのものがもっとも有名。アテネでは、ポリス(都市国家)を代表し、おもに行政をつかさどったアルコン・エポニモス、国家宗教を任としたバシレウス、軍事と非市民関係の司法を担当したポレマルコス、種々の裁判関係業務にあたった6名のテスモテテスの合計9名からなる。任期1年でポリス統治の重責を担ったが、紀元前487年に選任方法として抽選制が導入され、前457年に被選任資格が農民級の市民にまで拡大されてから、しだいに政治上、軍事上の重要性を失い、その地位を将軍に奪われた。

[清永昭次]

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