日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
バンキムチャンドラ・チャトーパーディヤーエ
ばんきむちゃんどらちゃとーぱーでぃやーえ
Bakimcandra Caopādhyāy
(1838―1894)
インドのベンガリー近代散文を確立した小説家、思想家。西ベンガル州に生まれる。カルカッタ大学に入学。同大学の第1回文学士試験に最優秀で合格。以後イギリス植民地政府の官吏としてベンガル各地で要職を歴任する。事実上の処女作である歴史小説『ドゥルゲシュノンディニ』(1865)はベンガル近代小説最初の傑作。1872年総合雑誌『ボンゴドルション』を創刊、若きタゴールらベンガル知識人に決定的な影響を与える。ベンサム、コントなど近代西欧思潮に影響を受けるが、後年しだいにヒンドゥー教を基底とした愛国主義に傾く。小説『アノンドの僧院』(1884)のなかの愛国歌「母をたたえる」は名高い。15編の小説のほか、随筆『コムラカントの手記』(1875)、評論『宗教真理』(1888)など著作多数。
[大西正幸 2018年5月21日]