改訂新版 世界大百科事典 「バンサンドボーベ」の意味・わかりやすい解説
バンサン・ド・ボーベ
Vincent de Beauvais
生没年:1190ころ-1264
フランスの著作家。初期のドミニコ会派修道会に入り,1229年以降フランスのボーベおよびパリにおいて,著作活動を行った。中世最大の百科事典とされる《大鏡Speculum majus》を,1247年から59年の間に編纂した。この著作は,全80巻,約1万項目にのぼる百科事典であり,みずから閲読しえた450人の著者,2000の文献からの引用を主体としている。4部からなり,〈自然の鏡Speculum naturale〉〈理論の鏡Speculum doctrinale〉〈歴史の鏡Speculum historiale〉の3部は,バンサン自身の手になる。最後の〈道徳の鏡Speculum morale〉は,後世の付加とみられる。当時の知識総覧として,情報の新奇さと多大さにおいて群を抜き,13世紀の知的状況を体現した貴重なテキストとして注目をあびている。中世を通じて,多数の写本が作製されたが,近代の刊本はごく一部を覆うにすぎない。
執筆者:樺山 紘一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報