日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
パブリック・イメージ・リミテッド
ぱぶりっくいめーじりみてっど
Public Image Ltd.
略称PIL。セックス・ピストルズが1978年の全米ツアー終了後に解散し、その後ボーカリストであったジョニー・ロットンJohnny Rotten(1956― )によって結成されたイギリスのロック・グループ。ロットンは本名のジョン・ライドンJohn Lydonを名のり、同年12月にPILのファースト・アルバム『パブリック・イメージ』をリリースする。メンバーはジョン・ライドン(ボーカル)、キース・レビンKeith Levene(1957―2022、ギター)、ジャー・ウォブルJah Wobble(1958― 、ベース)、ジム・ウォーカーJim Walker(1955― 、ドラムス)。セックス・ピストルズ時代のストレートなパンク・ロックとはまったく異なり、ジャーマン・ロックや実験音楽にも通じるフリー・フォームで金属的なサウンドを展開し、周囲に衝撃を与える。
その後ドラムスがマーチン・アトキンスMartin Atkins(1959― )に交代し、セカンド・アルバム『メタル・ボックス』(1979)を、金属缶にパッケージされた3枚組45回転12インチレコードとしてリリース(後にLP2枚組で再発)、それと前後してウォブルが脱退した。1981年に『フラワーズ・オブ・ロマンス』を発表後もメンバーの入れ替わりが激しく、実質的にはライドンのソロ・プロジェクトとして『アルバム』(1986)、『ハッピー?』(1987)、『ザット・ホワット・イズ・ノット』(1992)などアルバムを多数リリースしている。
パンク・ロックを代表するセックス・ピストルズのスキャンダラスなイメージを葬り去るために、ライドンはPIL結成時「パンクは死んだ」と語った。そのことばどおり、呪術的なボーカルと前衛的なサウンドで注目を集めたPILの足跡は、その反逆的なイメージとは異なって優等生的なロックン・ロールを奏(かな)でていたパンク・ロックに対して、音楽的にも「死」を宣告したものといえよう。
[増田 聡]
『『21世紀へのROCKの遺産 音楽専科復刻シリーズ7 パンクの逆襲2』(2001・音楽専科社)』