日本大百科全書(ニッポニカ) 「キース」の意味・わかりやすい解説
キース
きーす
Sir Arthur Keith
(1866―1955)
イギリスの解剖学、自然人類学者。スコットランド、アバディーンに生まれる。アバディーン大学、ロンドンのユニバーシティ・カレッジ、ドイツのライプツィヒ大学に学び、医学、理学ならびに法学の博士号を受けた。その間1889~1892年に軍医としてタイに赴き、霊長類の比較解剖学への興味が芽生えた。王立外科大学、王立研究所、アバディーン大学の教授を歴任。1912~1914年、王立人類学会会長を務めた。発生学、人種学などの研究とともに、主としてヨーロッパ、アフリカの人類化石に基づいて人類進化の研究を行った。とくに、イスラエルのカルメル山洞窟(どうくつ)人骨(旧人段階)がヨーロッパの旧人と異なることを明らかにし、西アジアにおける旧人研究の端緒を開いた。1924年に南アフリカ、タウングで出土したアウストラロピテクスについては否定的態度をとった。『人類の発生学および形態学』をはじめ、解剖学、人種学、人類進化学に関する多くの著書を残した。その幅広い研究により、近代自然人類学の先駆者の一人といわれる。
[埴原和郎 2018年11月19日]