日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒゲムシ」の意味・わかりやすい解説
ヒゲムシ
ひげむし / 鬚虫
有鬚(ゆうしゅ)動物門Pogonophoraに含まれる海産動物の総称。世界から150種ほど報告されているが、約60%が水深3000メートル以深から発見されている。ヤマトヒトツヒゲムシSiboglinum japonicumが津軽海峡の東方沖の水深1660メートルから、マシコヒゲムシOligobrachia mashikoiが1973年(昭和48)に能登(のと)半島の九十九(つくも)湾内から報告されている。このほかに、相模(さがみ)湾や駿河(するが)湾の水深500メートル以深からシボグリナム属Siboglinumの多くの個体が得られているが、種名はまだ明らかにされていない。最近、下田(しもだ)沖の浅海からシボグリナム属数種が得られ、研究が行われている。
ヤマトヒトツヒゲムシは長さ10センチメートル以下、体幅0.3ミリメートルの細長い体で、頭葉の腹面から1本の触手が出、長さ約8ミリメートルに達する。マシコヒゲムシは後部を欠いたもので体長76ミリメートル、体幅0.6ミリメートル。頭葉の腹面から10~18本の触手が房状に出ている。日本でのこの類の研究は非常に遅れている。
[今島 実]