日本大百科全書(ニッポニカ) 「ひやおろし」の意味・わかりやすい解説
ひやおろし
ひやおろし / 冷卸し
夏を越した清酒を、秋の冷涼な時季に樽(たる)詰して出荷すること。厳冬につくり、春に火入れ貯蔵した清酒は、秋風がたち、酒の温度が下がって外気温と同じくらいになる10月ごろには熟成して、香味も落ち着き、火落ちの心配もなくなる。この飲みごろの清酒を貯蔵タンクから、そのまま生(なま)詰で杉樽に入れて出荷するのが「ひやおろし」である。清酒は夏を越して熟成してから出荷するのが古くからの習わしであったが、近年は四季醸造が可能となって酒の季節感も失われ、また樽酒も少なくなり、ほとんどが火入れした瓶詰酒となり、酒質の淡麗化など嗜好(しこう)の変化もあって、ひやおろしの評価も変わった。
[秋山裕一]