化学辞典 第2版 「ヒュッケル電子環状反応」の解説
ヒュッケル電子環状反応
ヒュッケルデンシカンジョウハンノウ
Hückel electrocyclic reaction
ペリ環状反応の遷移状態に対してH.E. Zimmermanが提唱した理論において,ペリ環状反応に関するπ共役系とσ結合の構成原子軌道が互いに同位相で重なり合う場合をいう.遷移状態に関与する電子数が4n + 2個の場合は,基底状態の反応(熱反応)はヒュッケル電子環状反応となる.一方,遷移状態における原子軌道の重なりが1か所で逆位相となる場合をメビウス電子環状反応(Möbius electrocyclic reaction)とよぶ.遷移状態で4n個の電子が関与する熱反応はメビウス電子環状反応として起こる.励起状態の反応(光反応)では,4n + 2電子系がメビウス,4n電子系がヒュッケルとなる.Zimmermanの理論によれば,ペリ環状反応に許容される反応過程の選択性が簡単に判断でき,立体化学も説明することができる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報