化学辞典 第2版 「ビス-アレーン錯体」の解説
ビス-アレーン錯体
ビスアレーンサクタイ
bis-arene complex
二つの芳香族環の間に遷移金属がはさまれた構造をもつ錯体をいう.1955年にはじめて合成されたジベンゼンクロム[Cr(C6H6)2]が代表的なもので,メタロセンと同様のサンドイッチ構造をとっている.ジベンゼンクロムは,塩化クロムをアルミニウム粉末により還元し,ベンゼンを配位させ,その後でNa2S2O4で処理することによって合成される.
3CrCl3 + 2Al + AlCl3 + 6C6H6
→ 3[Cr(π-C6H6)2]+ [AlCl4]-
2[Cr(π-C6H6)2]+ + S2O42- + 4OH-
→ 2[Cr(π-C6H6)2] + 2H2O + 2SO32-
このほかに,無水塩化クロムとアリールグリニャール試薬からも合成できる.普通の有機溶媒に溶解し,300 ℃ まで熱的に安定であり,真空中では100 ℃ から昇華が起こる.中性のビス(π-アレーン)錯体は,空気中で容易に酸化され,カチオンを形成する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報