日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化クロム」の意味・わかりやすい解説
塩化クロム
えんかくろむ
chromium chloride
クロムと塩素の化合物。クロムの酸化数+Ⅱ、+Ⅲ、+Ⅳのものが知られているが、通常の条件では+Ⅲのものが安定である。
(1)塩化クロム(Ⅱ)CrCl2 無水の塩化クロム(Ⅲ)を純水素気流中で赤熱すると無水塩が得られ、これは気体では二量体Cr2Cl4の分子になる。湿った空気中で容易に酸化され、還元剤として用いられることがある。
(2)塩化クロム(Ⅲ)CrCl3 金属クロムを塩素気流中で赤熱すると無水和物が得られる。赤紫色の結晶で昇華性がある。ごく微量の塩化クロム(Ⅱ)とともに水に溶かし、塩化水素を通じて氷冷すると六水和物CrCl3・6H2Oを得るが、これには3種の水和異性体がある。
[Cr(H2O)6]Cl3 (ルクーラ塩:紫色)
[CrCl(H2O)5]Cl2・H2O (ビエルム塩:青緑色)
[CrCl2(H2O)4]Cl・2H2O (グブーザ塩:深緑色)
(3)塩化クロム(Ⅳ)CrCl4 塩化クロム(Ⅲ)と塩素とを600~700℃で反応させると得られるが、不安定である。
[岩本振武]