日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビュッヒャー」の意味・わかりやすい解説
ビュッヒャー
びゅっひゃー
Karl Bücher
(1847―1930)
ドイツの経済学者、経済史家、新歴史学派の代表者の1人。ボン、ゲッティンゲン大学に学び、『フランクフルター・ツァイトゥンク』紙の記者を経たのち、ドイツ、スイスの諸大学教授を歴任し、1892年以降ライプツィヒ大学教授。F・リストやB・ヒルデブラントの経済発展段階説を批判し、財が生産者から消費者の手に渡るまでに経る過程の長さを基準にして、封鎖的家内経済→都市経済→国民経済という独自の経済発展段階説を唱えた。論文集『国民経済の成立』Die Entstehang der Volkswirtschaft全2巻(1893)にそれがみえる。また労働科学の研究にも着手して『労働とリズム』Arbeit und Rhythum(1896)を著し、さらにライプツィヒ大学に新聞学研究所を創設して没年まで新聞の社会学的研究にあたり、その面の研究に先鞭(せんべん)をつけた。
[早坂 忠]
『権田保之助訳『国民経済の成立』(1942・栗田書店)』▽『高山洋吉訳『労働とリズム』(1944・第一出版)』