改訂新版 世界大百科事典 「ファールーク1世」の意味・わかりやすい解説
ファールーク[1世]
Fārūq Ⅰ
生没年:1920-65
エジプトのムハンマド・アリー朝の実質上最後の国王。在位1936-52年。父フアード1世の死後王位を継ぐが未成年であったため翌37年7月に正式に即位。第2次大戦とともにイギリスはイギリス・エジプト同盟条約に基づくエジプトの対英協力を不可欠としたが,ファールーク1世は条約締結後親英派に転じていた議会第一党のワフド党に政権担当を許さず,その結果42年2月イギリスは国王にナッハース親英政権承認を強要するという内政干渉に出た。第2次大戦後,イギリス・エジプト同盟条約廃棄を求める国民的反英闘争高揚の中で,国王は対英交渉を妥協的立場の宮廷取巻きの政治家に任せた。民族的危機に際して,反議会主義にとらわれた国王の自堕落ぶりは対英交渉における無力さをさらけ出し,自由将校団にエジプト革命(52年7月)を決意させた。革命後国王は退位し,ローマへ亡命した。
執筆者:藤田 進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報