改訂新版 世界大百科事典 「フィッシャーの理想算式」の意味・わかりやすい解説
フィッシャーの理想算式 (フィッシャーのりそうさんしき)
Fisher ideal formula
指数の作成にあたってはいろいろな方式があるが,その代表的なものはラスパイレス算式とパーシェ算式である。しかし,どの方式を採用すべきかを決めるにはなんらかの判断基準が必要である。I.フィッシャーはそのための基準として,時点転逆テスト--たとえば基準年次から比較年次までに物価が2倍になっていれば,逆に比較年次を基準にすれば,先の基準年次の指数は1/2になっていなければならない--と要素転逆テスト--価格×数量=金額であるから,指数についても,物価指数とそれと同じ方式で計算された数量指数をかけたものは金額指数に等しいという関係が成立していなければならない--などのいくつかのテスト基準を考えた。ラスパイレス算式とフィッシャー算式は上の二つのどれも満たさないが,ボーリーArthur Lyon Bowley(1869-1957)が考察したラスパイレス算式による指数とパーシェ算式による指数の幾何平均をとって指数とする方式は上の二つのテストに合格することから,フィッシャーはこれを理想算式と呼んだ。しかし,彼が提示したテストはすべて指数算式の形式的な性質を吟味するだけのものであって,指数の実質的な意味をそこに見いだすことはできない。
→指数
執筆者:貝山 道博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報