化学辞典 第2版 「フィッティヒ反応」の解説
フィッティヒ反応
フィッティヒハンノウ
Fittig reaction
炭化水素のハロゲン置換体にエーテル溶液中で金属ナトリウムを作用させると,二つの炭化水素基が結合して炭化水素を生じる.次の3種類の反応がある.
(1) ハロゲン化アルキルどうしの反応
2RX + 2Na → R-R + 2NaX
(2) ハロゲン化アリールどうしの反応
2ArX + 2Na → Ar-Ar + 2NaX
(3) ハロゲン化アリールとハロゲン化アルキルの反応
ArX + RX + 2Na → Ar-R + 2NaX
このうち,(1)は1832年,フランスの化学者C.A. Wurtz(ウルツ)によって発見されたもので,ウルツ反応またはウルツ合成とよばれている.(2)は1864年,ドイツの化学者R. Fittig(フィッティヒ)がこのウルツ反応を芳香族に適用したもので,フィッティヒ反応とよばれる.ただし,この反応は収率がきわめて低く,実用にならない.(3)は収率もかなりよく,生成物であるアルキル置換芳香族炭化水素Ar-Rを副生成物Ar-ArおよびR-Rから分離することも比較的容易で,実用になる.たとえば,次のような反応である.
C6H5CH2CH2CH2CH3
この(3)のタイプの反応を,ウルツ-フィッティヒ反応あるいはフィッティヒ反応とよぶ.なお,1877年にフリーデル-クラフツ反応が発見されて以来,芳香族炭化水素のアルキル置換はフリーデル-クラフツ反応によって行われるようになり,ウルツ-フィッティヒ反応はあまり用いられなくなった.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報