フェムト秒分光学(読み)フェムトびょうふんこうがく(その他表記)Femtosecond spectroscopy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェムト秒分光学」の意味・わかりやすい解説

フェムト秒分光学
フェムトびょうふんこうがく
Femtosecond spectroscopy

フェムト秒 (fsと略す。 1fsは 1000兆分の1秒) 程度の超短光パルスをレーザーでつくり,超微細,超高速の物理,化学,生物現象を調べる方法。 1999年度のノーベル化学賞受賞者であるエジプト生まれのアメリカの化学者 A.ゼワイルが創始した。 1fsの光パルスは長さにすれば 0.3μm (マイクロメートル) 程度だが,分子原子の振動周期は数十~数百 fsなので,フェムト秒程度の超短光パルスを使えばそれらが励起したり反応したりするときの様子をいわば「スローモーション」で知ることができる。触媒の中間状態などの化学反応,光合成や視覚情報処理などでのたんぱく質挙動など,広範囲の応用がある。また短い光パルスはより長いパルスを場所的に集中させてつくるため,ピーク強度もごく強くすることができる。そのようなピーク強度の強いパルスは入力と出力が比例しない非線形光学現象を起こすことができ,これらはさらに高感度,高分解能の分光に使われている。

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