日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェルメル」の意味・わかりやすい解説
フェルメル
ふぇるめる
фермер/fermer ロシア語
ソ連末期の農業政策以来その導入が奨励された家族経営農場のこと。ファーマーfarmer(農業経営者)のロシア語訳。ソ連の集団農業において、3%の土地にすぎない個人副業経営が農業総生産高の30%を担っていたので、個人・家族の経営の有効性は明らかであった。しかし、個人副業経営が集団農場の構成員を主としており、集団経営と裏腹の関係にあったのと異なり、フェルメルは集団農場を抜け出して家族だけで自立した画地で経営を営む点に大きな差異があった。しかし、中国の人民公社解体とは異なり、ソ連の集団農場は、形式的には株式会社や協同組合等々に分解してきたが(統計上「農業諸企業」と扱われる)、実質的解体はあまり進まなかったため、フェルメルも伸び悩んだ。
ソ連解体後のロシアでは、1996年の28万戸をピークに停滞し、その後も軌道にのっているとはいえない。旧ソ連のうちロシア以外の諸国で、フェルメル化が進展したのはアルメニアなど一部に過ぎない。
[中山弘正]
『中山弘正・上垣彰・栖原学・辻義昌著『現代ロシア経済論』(2001・岩波書店)』