軌道(読み)きどう(英語表記)orbit

翻訳|orbit

精選版 日本国語大辞典 「軌道」の意味・読み・例文・類語

き‐どう ‥ダウ【軌道】

〘名〙
① 一定の速度と方向をもって運動する物体または粒子の道すじ。特に、天体の運行する径道をいう。〔和英語林集成(再版)(1872)〕
※改正増補物理階梯(1876)〈片山淳吉〉下「然れども其運行は互に皆限定したる常道ありて、之を軌道と名づけ」
物事がある方向に進んでいくように予想され、計画されたその方向、状態。正しい方向。また、その方向に進むこと。
※帰省(1890)〈宮崎湖処子〉八「唯我が過去の履歴、現在の地位、未来の軌道」
③ 車の通行する道。または、車輪の跡。わだち。
(イ) 車両の通行に供するための構造物。路盤の上に道床を設け、まくら木などで締結した二本以上の軌条を平行に敷設してある。また、軌条と同じ意味に使われることもある。
※西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉外「鉄道の改革を始め鉄線を太くし軌道の幅を定め」
(ロ) 一般交通の用に供する道路の路面に、鉄道車両を走らせるために敷設した構造物。
※軌道条例(明治二三年)(1890)二条「馬車鉄道及其他之に準ずべき軌道布設の為」

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デジタル大辞泉 「軌道」の意味・読み・例文・類語

き‐どう〔‐ダウ〕【軌道】

電車などの軌条車両を走らせるための構造物からなる道。道床・枕木まくらぎ・レールなどからなる。「市電の軌道
天体が運行する道筋。「人工衛星軌道
物体が運動するときに描く一定の道筋。「放物線軌道を描く」
物事の経過していく道筋。「生活の軌道を修正する」「軌道をはずれる」
[類語](1線路軌条レール/(2自転公転運行

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改訂新版 世界大百科事典 「軌道」の意味・わかりやすい解説

軌道 (きどう)
orbit

物体が運動するときに,その物体を代表する点(重心をとることが多い)が空間に描く道すじの曲線。質量mの物体が力Fを受けて運動するとき,ニュートンの運動方程式は,物体を代表する点の位置座標を(xyz)として,と表される。時刻t=0のときの位置と速度が与えられれば,この方程式から物体の位置が,

 xf1t),yf2t),zf3t)のように時間tの関数として求められ,各tに対する位置(xyz)をつなげば軌道が得られる。とくに,z≡0となるような平面運動では,xf1t)とyf2t)からtを消去してyfx)の形で軌道を与える式が求められる。一様な重力を受けて行う物体の運動の軌道が放物線になること,定点から距離の2乗に逆比例する大きさの引力を受けて運動する物体の軌道が,その定点を焦点の一つとする楕円(長円)になることはよく知られている。
執筆者:

一般に天体(人工天体を含む)が描く運動の経路を軌道といい,とくに惑星,小惑星,すい星の場合は,太陽に対する運動についていう。また,衛星の軌道はその母惑星に対するものである。天球上の惑星の視運動の経路は軌道とはいわない。摂動を無視するなら,惑星,小惑星,衛星の軌道は楕円であり,またすい星の軌道は楕円のほかに放物線や双曲線の場合もある。しかし天体の現実の軌道は,摂動によってもっと複雑となる。
執筆者:

軌道 (きどう)

(1)簡易規格の鉄道。一般には道路に敷設し,歩行者,自動車などと共用の関係を持つ。市街地で電車を運転する場合には,路面電車(市内電車,市電)ともいう。1882年,東京市街に馬車軌道を開業したのが日本最初の事例。歴史的には,人力,畜力,蒸気,内燃(ガソリン,ディーゼル)などの軌道が存在したが,現在は電気軌道に限られる。〈軌道法〉により,運輸,建設の両省庁が監督するが,なかには大阪市営地下鉄のように本格的な鉄道と区別がつかず,道路と無関係な事例もある。モータリゼーション進展に伴い,軌道は急減したが,道路使用効率の観点から,最近,その見直し論が台頭し,新式車両が各地に登場している。
執筆者:(2)鉄道の路盤上にある構造物の総称。道床,まくら木,軌条およびその付属品から構成されている。一般的には路盤上に砂利・砕石等を適当な厚さに敷きならして道床とし,まくら木を一定の間隔に配置し,その上に2本のレールを所定の間隔に犬釘またはボルト等の付属品で締結している。
鉄道
執筆者:

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普及版 字通 「軌道」の読み・字形・画数・意味

【軌道】きどう(だう)

車の通る道。また、法度に従う。また、天体の運行する道。〔唐書、暦志三上〕景の、軌の升を知る。

字通「軌」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軌道」の意味・わかりやすい解説

軌道
きどう
orbit

運動する物体が描く経路。特に閉曲線に沿って周期運動するとき,この閉曲線を軌道ということが多い。たとえば,円運動における円軌道,太陽のまわりを公転する惑星の楕円軌道,原子のボーア模型における電子の軌道,宇宙船の軌道など。位相空間における代表点の軌道は位相軌道またはトラジェクトリーと呼ばれる。

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デジタル大辞泉プラス 「軌道」の解説

軌道

松本創による著作。副題「福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い」。2018年刊行。2019年、第41回講談社本田靖春ノンフィクション賞受賞。

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世界大百科事典(旧版)内の軌道の言及

【運動】より

r(t)を与えることは,平面または空間に固定した座標系に対するrの成分,いいかえるとPの位置座標(x,y)または(x,y,z)をtの関数として(x(t),y(t))または(x(t),y(t),z(t))のように与えることと同じである。このとき,物体が平面または空間に描く曲線を軌道という。rr(t)はtを補助変数とした軌道の方程式である。…

【原子】より

…ニュートン力学と量子力学との間にはかなりの対応関係があり,量子力学の理論の本質を理解するのにニュートン力学が役だつ場合が多い。このため,原子内で電子が円軌道や楕円軌道を描いて運動しているという描写も,一つの有用な原子模型といえる。
【原子の存在の確定と原子構造の探究】
 物質を細分していくと,いくらでも細分できるのか,それとも,それ以上分割できない最小単位,すなわち原子に到達するのかということについては,古代ギリシアのころから論ぜられていた。…

【地下鉄道】より

…東京,大阪などでは新路線の地下鉄トンネルは深層化の傾向にあり,環境対策,道路交通のふくそう化なども加わって,開削工法から順次シールド工法への移行化がみられ,駅部トンネルは開削工法,駅間トンネルはシールド工法のパターンが定着しつつある。
[集電方式と軌道]
 地下鉄の運転動力には電気が利用されており,日本では直流600V,750V,1500Vの3種類が用いられている。集電方式は,一般の鉄道と同じように頭上の電線からパンタグラフで集電する架空線方式(1500V)と,走行用レールと並行に敷設されたレール(第3軌条という)から集電する第3軌条方式(600V,750V)とがある。…

【鉄道】より

…軌道(または軌条)や架線などの固定施設によって拘束され,決められた路線で運転される交通機関の総称。
【鉄道の経済的側面】
 19世紀は〈鉄道の時代〉といわれる。…

【路面電車】より

…乗降は路面または路面に特設した安全地帯と呼ばれる低いプラットホームを介して行い,客車にはその床面との乗降用にステップ(踏段)が備えられる。法令上では軌道と呼ばれ,専用敷地をもつ鉄道と区別される。 路面電車は,19世紀後半,産業革命の進展に伴う人口の都市集中によってもたらされた市街地内道路の交通難に対処する方式として創案されたもので,1881年ベルリン郊外での試用に始まる。…

※「軌道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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