改訂新版 世界大百科事典 「フェーメ裁判」の意味・わかりやすい解説
フェーメ裁判 (フェーメさいばん)
Femegericht
ドイツのウェストファーレン地方に出現し,とくに13世紀から15世紀中葉までの間に大きな活動をなした特異な類の裁判。この裁判の担い手であった裁判所を〈フェーメ裁判所〉という。〈フェーメ〉とはここでは刑罰の意であり,この裁判所は,王直属の一種の刑事裁判所である。そこではもはや一般民衆の参加がないことから,〈秘密裁判所〉とも称される。1名の裁判長と7名の審判人とにより裁判が行われるが,審判人は,同時に,死刑相当の犯罪の容疑者の弾劾人として機能する。この呼出しに応じない,またはここでの無罪の立証に成功しない被弾劾人は,絞首刑を言い渡される。同時に,この裁判所は,現行犯裁判所としても機能する。この裁判所の管轄権は,ついには帝国全土に及び,公的訴追と死刑執行とをもって,重犯罪の抑止に,したがって,平和の維持に,注目すべき役割を演じた。
執筆者:塙 浩
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報