刑事訴訟において,裁判所が審理の結果言い渡す裁判の一種。検察官が主張していた事実が罪とならないとき,または犯罪の証明がないとき,裁判所は無罪の判決をしなければならない(刑事訴訟法336条)。〈罪とならないとき〉とは,たとえば,検察官が適用を求めた刑罰法規が憲法に違反し無効と判断すべき場合や,法律解釈上審理の結果証明された事実には適用できない場合,また正当防衛が認められたり,被告人が刑事責任を負うことができない事情があるなどの結果,犯罪が成立しない場合である。一方,〈犯罪の証明がないとき〉には,被告人のアリバイが判明したり,真犯人が明らかになるなど被告人の無実が積極的に証明された場合と,有罪判決をするだけの証明が不十分であった場合とがありうる。しかし,刑事裁判においては,検察官側に被告人が有罪であることを合理的な疑いをこえる程度まで証明する責任があり,被告人には,みずからの無実を積極的に証明する義務はない。証明不十分による無罪は,有罪の証明がなかったという点において無実の証明があった場合と区別はなく,無罪判決自体に種別を認めるのは〈疑わしいときは被告人の利益に〉という刑事裁判の鉄則に反する。
第一審の無罪判決に対して,検察官は控訴することができるが,被告人が控訴することは認められない。無罪判決が確定した場合,無罪とされた行為について被告人であった者がふたたび刑事責任を問われることはなくなる(憲法39条)。なお,無罪の判決が確定した後,被告人は,弁護人に対する報酬など裁判に要した費用の補償を求めることができる(刑事訴訟法188条の2~188条の7)。また,逮捕・勾留など未決の抑留・拘禁を受けていた場合には,刑事補償を請求することができる(憲法40条,刑事補償法)。
→有罪
執筆者:酒巻 匡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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