フタトゲチマダニ(読み)ふたとげちまだに

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フタトゲチマダニ」の意味・わかりやすい解説

フタトゲチマダニ
ふたとげちまだに / 二刺血真蜱
[学] Haemaphysalis longicornis

節足動物門クモ形綱ダニ目マダニ科チマダニ属の吸血性のダニ。赤褐色を呈し、触肢の背腹両面に棘(とげ)をもつ。未吸血雌の体長は3ミリメートル弱で、吸血すると8ミリメートルほどになる。雄は約2.5ミリメートルで、吸血するが伸びない。日本各地の放牧牛にもっとも多くみられるほか、ヒトを含む多くの哺乳(ほにゅう)類や鳥類にも寄生する。旧ソ連、中国北部、朝鮮半島、オーストラリア、ニュージーランドにも分布する。後二者での分布は、19世紀に日本から輸出されたウシについて運び込まれたものが定着し、繁殖したといわれている。本種には、形態で区別できないが、染色体数を異にする単為生殖系と両性生殖系の2系統の存在が知られている。前者の染色体数は雌32、雄31で、日本各地に分布し、雄はまれにしかみつからない。後者の染色体数は雌22、雄21で、雌雄ほぼ同数生息し、九州、四国、本州南西部の牧野に多いが、両系統の分布境界は明瞭(めいりょう)でない。各地の放牧牛間にピロプラズマ症を媒介し、外国でも病原体を媒介するので、放牧牛の深刻な害虫とされている。

山口 昇]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のフタトゲチマダニの言及

【マダニ】より

…山野ではウサギ,イノシシ,その他多くの野生動物に寄生しているが,人も被害を受ける。牧野では家畜の被害が多く,刺咬吸血による皮膚炎,貧血が見られるほか,ウシにはフタトゲチマダニHaemaphysalis longicornisによってピロプラズマ病が媒介される。また,ウサギ,イヌおよび人にはキチマダニH.flavaあるいはヤマトマダニIxodes ovatus(イラスト)によって野兎病(やとびよう)が伝播(でんぱ)される。…

※「フタトゲチマダニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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