スペインの詩人ヒメネスの代表的散文詩。1917年刊。詩人が郷里モゲールで療養生活を送っていたころに書かれた。銀色のロバ、プラテーロ(小さくて、むくむく毛が生え、ふんわりしている)に託して、モゲールの自然やそこに住む人々との交流を歌ったもの。全編に流れる生きとし生けるものに対する愛と善意に裏打ちされた繊細な叙情性、ときおり織り込まれる哀切なドラマティズムは、散文でありながら詩の極致を思わせる。発表以来、スペインはもとより、全世界で大きな反響を巻き起こした。美しい田園で繰り広げられる、ロバと優しい詩人の対話という設定は、読者の範囲を年少者にまで広げている。
[有本紀明]
『長南実訳『プラテーロとぼく』(岩波少年文庫)』