日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメネス」の意味・わかりやすい解説
ヒメネス
ひめねす
Juan Ramón Jiménez
(1881―1958)
スペインの詩人。アンダルシア地方のモゲールに生まれる。19歳のとき学業を捨てマドリードに出る。1900年の『すみれの心』、それに続く『哀調のアリア』(1903)などの一連の作品は、ロマン主義的な沈潜した叙情と近代主義(モダニズム)の音楽と色彩に満ちている。10年前後の『孤独のひびき』などの感覚的で同時に内密的な詩風は、16年の生涯の伴侶(はんりょ)セノビアとの結婚、その後のアメリカ旅行で一変する。『新婚詩人の日記』(1917)はその結晶である。いっさいの装飾を捨てた裸の詩、しかも内省的、知的な詩を標榜(ひょうぼう)、『石と空』(1919)はその延長上にある。この詩的探求の道程は『すべての季節』(1936)、『内奥の獣』(1949)と進むにつれ完成の域に達する。詩人の意識は自然と神秘的な融合を遂げ、唯一の表現、詩人のいう神を得る。39年、内乱を避けてアメリカ、プエルト・リコに住む。56年ノーベル文学賞受賞。散文詩の珠玉の作品『プラテーロと私(わたし)』(1917)がある。
[有本紀明]
『荒井正道訳『石と空』(『世界名詩集大成14 南欧・南米』所収・1962・平凡社)』