スペインの詩人。アンダルシアのモゲールに生まれる。19歳のときマドリードに出て,R.ダリオ,バリェ・インクランなどの近代派詩人の知遇を得る。《睡蓮》(1900),《哀調のアリア》(1903)などの詩集は彼らとの友情の産物であり,すぐれた音楽性と豊かな色彩感にあふれ,そのうえにアンダルシア人特有の熱っぽい感情が付加されている。1917年に発表した散文詩《プラテーロと私》は各国語に訳され,彼の文名を世界的なものとした。この作品は,終生こよなく愛した故郷モゲールを舞台にしたロバと少年との感動的エレジーであり,作者の最高傑作である。《新婚詩人の日記》(1917)以後,近代主義を脱し,地味で知的な〈純粋詩〉を目ざし,《永遠》(1918),《石と空》(1919)などを発表。《内奥の獣》(1949)にいたり,純粋詩は神性を帯びた精神的直感の境地に到達している。その作風はガルシア・ロルカをはじめ,スペインやラテン・アメリカの詩人たちに大きな影響を与えた。内戦勃発とともに,キューバ,アメリカへ渡り,ノーベル文学賞受賞(1956)の2年後,プエルト・リコで死去。
執筆者:志賀 一郎
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スペインの詩人。アンダルシア地方のモゲールに生まれる。19歳のとき学業を捨てマドリードに出る。1900年の『すみれの心』、それに続く『哀調のアリア』(1903)などの一連の作品は、ロマン主義的な沈潜した叙情と近代主義(モダニズム)の音楽と色彩に満ちている。10年前後の『孤独のひびき』などの感覚的で同時に内密的な詩風は、16年の生涯の伴侶(はんりょ)セノビアとの結婚、その後のアメリカ旅行で一変する。『新婚詩人の日記』(1917)はその結晶である。いっさいの装飾を捨てた裸の詩、しかも内省的、知的な詩を標榜(ひょうぼう)、『石と空』(1919)はその延長上にある。この詩的探求の道程は『すべての季節』(1936)、『内奥の獣』(1949)と進むにつれ完成の域に達する。詩人の意識は自然と神秘的な融合を遂げ、唯一の表現、詩人のいう神を得る。39年、内乱を避けてアメリカ、プエルト・リコに住む。56年ノーベル文学賞受賞。散文詩の珠玉の作品『プラテーロと私(わたし)』(1917)がある。
[有本紀明]
『荒井正道訳『石と空』(『世界名詩集大成14 南欧・南米』所収・1962・平凡社)』
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… 19世紀後半のリアリズムの時代になると,主として社会的テーマを身近なもの,地方的なものに即して描く,風俗描写的な〈郷土小説〉が数々の佳作を生むことになる。このジャンルの嚆矢となったフェルナン・カバリェロFernán Caballero(1796‐1877)の《かもめ》,P.A.deアラルコンの《三角帽子》,そしてアンダルシアを舞台に,恋と宗教的使命の板ばさみとなった神学生の心の葛藤を描いたJ.バレーラの《ペピータ・ヒメネス》などである。この傾向に属するものの,はるかにスケールが大きく,セルバンテスに次ぐ小説家と見なされているのがB.ペレス・ガルドスである。…
※「ヒメネス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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