化学辞典 第2版 の解説
ヘキサニトロコバルト酸塩
ヘキサニトロコバルトサンエン
hexanitrocobaltate
【Ⅰ】ヘキサニトロコバルト(Ⅱ)酸塩(hexanitorocobaltate(Ⅱ)):MⅠ2M′Ⅱ[CoⅡ (NO2)6].ただし,得られているのは MⅠ = K,Na,Rb,NH4,M′Ⅱ = Pb,Baのみ.MⅠ = K,M′Ⅱ = Pbの場合は,CoⅡ塩と PbⅡ塩を含む水溶液に亜硝酸カリウムを加えて反応させると得られる.ひずんだ正八面体型の [Co(NO2)6]4- を含む.暗緑色の固体.密度3.41 g cm-3.室温では空気中でも安定である.【Ⅱ】ヘキサニトロコバルト(Ⅲ)酸塩(hexanitrocobaltate(Ⅲ)):MⅠ3[Co(NO2)6].亜硝酸コバルト塩(cobaltinitrite)は誤称である.アルカリ金属塩およびアンモニウム塩が得られている.金属 MⅠの亜硝酸塩の濃水溶液に塩化コバルト(Ⅱ)と酢酸を加え,空気酸化すると得られる.正八面体型の [Co(NO2)6]3- を含むイオン結晶.K塩は黄色の結晶.Co-N約2.04 Å,N-O約1.11 Å.乾燥固体は空気,日光にも安定である.水溶液は加熱または光照射で分解する.Na塩は水に可溶であるが,K,NH4,Rb,Csなどの塩は水に難溶.Na塩は,K+ の定性分析確認試薬として用いられる.【Ⅲ】ヘキサニトロコバルト(Ⅲ)酸カリウム(potassium hexanitrocobaltate(Ⅲ)):K3[Co(NO2)6](452.26).フィッシャーイエロー(Fischer's yellow),コバルトイエロー(cobalt yellow),オーレオリン(aureolin)ともいう.黄色の安定な固体.水に難溶.顔料として油絵,水彩画,ガラスや陶器表面やゴムの彩色などに用いられる.[CAS 13782-01-9]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報