ガラス(読み)がらす(その他表記)glass

翻訳|glass

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガラス」の意味・わかりやすい解説

ガラス
がらす
glass

もっとも簡潔な定義は「固体状態になった過冷却液体」で、同じく固体である結晶と対比される。アモルファスなど近縁の名称があるが、ガラス転移点Tg(ある狭い温度域を境として熱膨張係数などの温度係数や比熱が急激に変化する温度)が観測されるものだけに限定するのが妥当であろう。通常、「溶融法でつくられた無機酸化物(ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩など)で、非晶質固体状態にあるもの」をガラスと称することが多いが、本来のガラスの定義は、製法や物質によって決まらない。したがって、気相法や液相法でつくられたガラス、あるいはプラスチックや金属でもガラスは存在する。

 ガラスは透明で硬く、清潔な雰囲気のなかにいつまでも美しく輝き続けるという印象に加えて、一瞬にして砕け散ってしまうはかなさも備えている。5000年近く人類の文化とともに育ってきたガラスに対する人々のこのような印象は抜きがたい。しかし、いまやガラスは、防弾ガラス、プラスチックの定規のように曲がるガラス、電気を通すガラス、太平洋の底を横切ってアメリカと日本とを光通信で結ぶグラスファイバー(ガラス繊維)など、その発展に大きな飛躍がみられる。

[境野照雄・伊藤節郎]

歴史

地球上に初めて現れたガラスは自然がつくりだした黒曜(こくよう)石である。火山から噴出した溶岩が固まると結晶質の岩石になるが、急冷されるとガラス質になるものがある。鉄、マンガンなどを含んでいるから色は黒いが、光沢があり、割れやすく、薄い部分は光にかざすと深い紫色に見えたりする。のちに地上に出現した原始人は、鋭い破片を武器や工具に、形のよいものを装飾に使った。

 ヨーロッパには紀元前1500年ごろのエジプト王朝時代のガラス器などが残っているが、人類がいつからガラスをつくり始めたかは正確には知られていない。しかしそれ以前から焼物のタイルがつくられていたから、その釉薬としてガラスに似た物質を扱っていて、それから発展したと考えられる。ガラスとそれをつくる技術は地中海沿岸からシルク・ロードおよび海路で中国に渡り、約2000年前に日本へ渡来したらしい。正倉院のカットガラス(白瑠璃碗(るりのわん))はその一例で、同型のものがシルク・ロードに沿って発見されている。エジプト王朝時代にはるつぼがなかったので、棒の端に砂と粘土の塊をつくり、その表面にすこしずつガラスを溶かして巻き付ける操作を繰り返して成形し、細工などを施してから冷ましたのち、砂や粘土をかき出してガラス器とした。溶融も不完全で、泡や不純物も多く、黄、緑、青、赤などの色模様は美しいが透明なものは少ない。やがて紀元前1世紀ごろに軟らかいガラスを鉄パイプの先に付け吹いて中空の器をつくる技術が現れた。また、ガラスを溶融するための耐火物ないしはるつぼの急速な発達もあって、ガラスは一挙に人間の生活に浸透していった。そして3世紀末には窓ガラスが現れている。寺院が色鮮やかなステンドグラスで飾られたことが9世紀末に記録されているが、現存する最古のものは12世紀のものである。他方、中国では紀元前数世紀にすでにガラス玉などの装飾品が現れている。

 日本の弥生(やよい)、古墳時代の出土品にみられるガラスの勾玉(まがたま)や管玉(くだたま)などの多くは中国から渡来したものであるが、弥生中期には国内においてもつくられ始めている。しかしこれも平安時代には衰えて、長い空白ののち、16世紀ごろから、スペイン、ポルトガル、オランダなどからの鏡、望遠鏡、コップなどの流入が始まり、これらの刺激によって18世紀以降、大坂、江戸、ついで薩摩(さつま)などでふたたびガラスの生産が始まっている。

 ヨーロッパでは12世紀ごろからベネチアのガラス工芸が急速に発展しベネチア・ガラスとして数百年にわたる隆盛のなかで、色彩豊かな種々の装飾的技法を生み出し、その影響は北欧からボヘミアまで、ヨーロッパ全域に及んだ。ヨーロッパと異なって、日本では平安時代以降の文化になじまなかったせいか、明治時代になるまで日常生活のなかにガラスが取り込まれることはほとんどなかった。

[境野照雄・伊藤節郎]

ガラスの一般的な特徴

多くのガラスには、(1)透明で等方性、(2)硬くもろい、(3)水に溶けず、変質しない、(4)耐熱性であるが温度の急変に弱い、(5)電気の絶縁体、(6)成形、加工しやすい、(7)組成の組合せの制約が少ない、などの性質があるから、窓ガラス、瓶、レンズ、ファイバー、蛍光灯、平面薄型テレビ、食器、鏡、コーヒーサイフォン、ビーズなど、さまざまな形となって、あらゆる方面で使われている。

 このなかで特筆しなければならないのは(6)の性質で、板状、瓶状、菅状など、自由な形状をつくることができる。その秘密は、図Aのように同じ固体でも結晶と異なり融点がないから、液体―過冷却液体―ガラスの間で、大部分の性質が温度変化に伴って滑らかに連続的に変わるからである。物質の流れにくさを測る粘性率(パスカル・秒、記号はPa・s)が、溶融温度の100Pa・sくらいから常温の1017Pa・sくらいまで変わるから、その中間領域でいろいろな成形が可能である。また(7)の性質のため、条件さえ適合すれば、ほとんどすべての元素をガラスとして取り込む特性があるので、原子炉の放射性廃棄物なども適当な化学組成に変えて安定なガラスにすることができる。

 以上のように、ガラスはその歴史も古く、また日常生活はもとより科学、技術の方面まで広く利用されているにもかかわらず、その学問的な本質については不明な点も多く、興味ある物質といえる。

[境野照雄・伊藤節郎]

種類と性質

日常使われている主要なガラスの化学組成とその特性を表2表3に示す。ただし、シリカガラス(石英ガラス)にはさらに純度の高いものがある。一般の傾向として二酸化ケイ素SiO2、酸化アルミニウムAl2O3の含有率の大きいものは使用温度限界が高くなるが、酸化ナトリウムNa2O、酸化ホウ素B2O3、酸化鉛PbOなどの多いものは逆に低くなる。ガラスの粘度が1012Pa・sになる温度(徐冷点)が高いほど使用温度限界も高い。温度の急変に対しては、熱膨張係数が低いガラスほど強い。一般のガラスが、温度が1℃上がると1000万分の1膨張する単位(10-7/℃)で90付近であるのに対して、フラスコやコーヒーサイフォンなどのガラスでは30近いものが多い。また、シリカガラス(石英ガラス)は5程度であり、さらにチタニア(二酸化チタンTiO2)を少量含むシリカガラスでは膨張係数がほぼゼロになるので、これらのガラスは灼熱(しゃくねつ)させた直後水中に投じても割れない。硬さは構成原子間の結合力や原子の充填(じゅうてん)率が高いものほど大きくなるが、機械的強度は人為的に発生した微小の傷その他の要因があって簡単には表されない。通常、ガラスは水や酸・アルカリに対する耐久性が高いが、薬品瓶やアンプルなどではわずかな溶解量が問題となるので、溶出量の少ないものが望まれる。一方、バイオ材料の分野では、溶解速度が制御され、適度に溶解しやすいガラスが求められている。

[境野照雄・伊藤節郎]

機械的強度

ガラスの破壊強度は、その硬さに比較すると異常に低いだけでなく、測定値のばらつきも大きい。図Bに示す通常のガラスbでは1平方センチメートル当り100~3000キログラム、つまり30倍くらいの変動がみられる。1平方センチメートル当り700キログラム付近の印は通常のガラスの実用的強度である。しかし強化ガラスcやdのガラスはそれよりはるかに強く、シリカガラスの理論強度の1平方センチメートル当り24万キログラムに近いものもあり、表4をみても、直径5マイクロメートルのガラス繊維の強度はスチールよりずっと強い。ガラスの強度にこのような極端な開きが出るのは、(1)ガラスが硬くて変形しにくく、そのため、(2)表面に微小な傷が付きやすく、その傷によって強度が極度に低下するためである。この傷は深さ1~100マイクロメートルくらいのものが大半で、この程度の傷は指で軽くこすったりすると容易に発生する。図Bのbはこのような傷を無数にもつ通常のガラスで、まったく傷がないと仮定した理論強度に比べ、強度は100分の1から1000分の1くらいに低下している。さらに、(1)表面の傷、(2)なまし不良などによる残留応力、(3)大気中の高い湿度が共存すると、ガラス製品が使用中または保存中に突然割れることがある。これは、湿気による傷の内面に対する侵食が、使用時にかかる引張り応力や残留している引張り応力によって加速されるためで、傷先端での応力集中が大きいほど侵食が進むという悪循環によって傷の先端がしだいに鋭くなり、応力集中が限界に達した時点で破壊する。この遅れ破壊あるいは疲労とよばれる現象は高温多湿の日本などでは注意する必要がある。

[境野照雄・伊藤節郎]

ガラスの構造

固体のもっとも安定な状態は原子または分子が規則的に整然と配列した結晶で、それがエネルギーのもっとも低い平衡状態にある。ガラスは配列の規則性が低く、エネルギーもやや高い非平衡状態にある。図Cに、実用ガラスの主成分である二酸化ケイ素が単独で結晶(クリストバライト)になった場合と、ガラス(シリカガラス)になった場合の原子配列(構造)の相違を二次元的に図示した。両者とも共通の構造単位をもっているから、直径0.7ナノメートル程度の領域では両者間に差はみいだせないが、3ナノメートルほどの領域を比較すれば差がみられる。このことはガラス中に密度のゆらぎが生じていることを意味する。光ファイバーのように光路が長くなるとこの密度のゆらぎが光の散乱を起こし、光の伝送を妨げる要因となる。ただし、シリカガラスの構造図には異論もあるが、コンピュータのシミュレーションにより、その構造の詳細がさらに明らかにされつつある。以上は二酸化ケイ素単一成分系のガラスの構造であるが、酸化ナトリウム、酸化カルシウムなどを含む多成分系ガラスに関しては、その構造に対してさらに不確定な要素が増え、厳密に統一された結論はない。ただし、ナトリウムなどの陽イオンの存在点が古典的構造論の示すような無規則で均質なものではなくて、不均質な構造であると考えられている。コンピュータのシミュレーションによって、多成分系ガラスの構造も詳細に議論されている。

 図Dは、比容(物質1グラム当りの容積)の温度に対する変化から同一組成の結晶とガラスを対比したもので、融液を冷却する場合に、冷却速度が十分に遅いとf―e―d―aの経路をたどって比容aの結晶となるのに対して、冷却速度が速いとf―e―c―bと過冷却状態、転移点を経て比容bのガラスとなることを示している。室温でガラスの比容bが結晶の比容aより大きいことは、図Cのような同一構成単位の規則的配列(1)と不規則な配列(2)とから容易に理解できよう。ただし、水と氷の関係のようにガラスのほうが結晶よりも比容が小さい場合もある。なお、ガラスと結晶とがガラス転移点以下でほぼ等しい熱膨張を示すのは、温度変化に対して原子配列がそれぞれ相似性を保っているからである。転移点以上の過冷却液体では構造の相似性は崩れ、たとえば温度上昇に伴ってc点のガラス構造からe点、f点の融液の構造へと結晶とは異なる構造変化を示している。厳密には冷却速度に従って転移点は温度軸上で左右に動き、その結果、b、cは上下に平行移動する。同一のガラスでも熱履歴によって密度、屈折率などに小差を示すのはこのためである。逆に、密度や屈折率を正確に決定するには、熱履歴(熱処理温度と時間、冷却速度など)を精密に制御する必要がある。

 ある種の多成分系ガラスは高温では均質な融液となるにもかかわらず、温度が下がって粘度が増した段階で、組成の異なる2種の液相(液体)に分離する。この現象を分相といい、分離した相の大きさが数ナノメートルくらいでは肉眼的に検知できないが、可視光線の波長に近い大きさに達すると光の散乱によってタンパク光が現れる。たとえば二酸化ケイ素57.9%、酸化ホウ素31.6%、酸化ナトリウム10.5%付近の組成のガラスは、582℃付近では処理条件によって、分離した2相が互いに複雑に絡み合っている。量の多い相は高ケイ酸質、少ないほうの相は高ホウ酸ナトリウム質である。さらなる熱処理によって、それらの構造が大きくなるとガラスは光の散乱によって白濁してくる。この2相のうち、ホウ酸ナトリウムに富む相は水や酸によく溶ける。そこで、この分相したガラスを薄い塩酸に浸すと、片方の相が溶出して、残ったガラスには直径2~10ナノメートルほどの貫通孔が無数にでき、その孔の壁面の面積は1グラムのガラスについて200平方メートルにも達する。このような多孔性ガラスは吸着や、酵素固定用として広い用途をもっている。

[境野照雄・伊藤節郎]

ガラスの製造

どのような用途のガラスを大量に製造しているかによってガラス工業は表5のように分類できる。用途はきわめて多様で、それぞれ異なった要求に対応できるように、透明性、耐熱性、耐水性、機械的強さ、化学薬品に対する強さ、成形加工の容易さ、各種の色調などを制御する必要があり、さまざまなガラス組成が使われている。しかし、社会生活の変化にしたがって、ガラスに対する要求はつねに新たなものが現れるので、絶え間なく新しい化学組成のガラスをつくりだし、さらに生産性をあげ、省エネルギーを実現するため、物理蒸着、化学蒸着、ゾル‐ゲル法、直接通電式電気溶融、気中溶解など、新しい製造技術が生まれてきている。この項では、古くから行われている溶融法によるガラス製造について記す。

[境野照雄・伊藤節郎]

溶融

実用ガラスの主要原料は珪砂(けいさ)、珪石が主体で、以下表6のようにソーダ灰等、数種類を添加し、さらに目標とするガラスそのものや、それに類似したガラスのくず(カレット)を数十%加えたものを混合して原料とする。小規模では、100~200キログラム入りのるつぼで、大規模な連続溶解では、一端に原料の入口、他端に溶融ガラスの出口をもつ、容量10~1000トン程度の長方形のタンク炉を用い、1400~1600℃で溶解する。高温で溶解中に、あらかじめ原料に添加しておいた発泡剤が分解してガスを放出して大きな泡を発生し、同時にガラスの液体中に溶け込んでいる過飽和のガスや小さな泡をその泡中に取り込み成長しながら、浮上して、最終的に泡のない透明なガラスがつくられる。また、ガラス液体に接する雰囲気の酸化還元状態や水分がガラスの品質に大きな影響を与えるので、それらは厳密に制御されてつくられている。ガラス瓶の製造工程の例を図Eに示す。

[境野照雄・伊藤節郎]

成形

ガラスをるつぼで溶融する場合には、鉄竿(ざお)でガラスの適量を取り出し、空中で、または金型の中で吹いて成形する。前者を宙吹き法、後者を型吹き法という。溶けたガラスを型に流し込み機械でプレスして成形する場合もある。空になったるつぼには原料を入れ、繰り返し使用する。タンク炉の場合には一般に24時間当り数トンから1000トンのガラスを連続的に取り出し、数台の自動機械にかけて成形する。ソーダ石灰ガラス(ソーダライムガラス)に例をとれば、図Fのように、1200℃から800℃まで冷却する間にガラスの粘性率は1000倍にも増大するから、製瓶の場合ほぼこの温度範囲を利用し、図Gの(a)で金型に投入した軟らかいガラス塊が成形で急激に冷却され、数秒間で完成品(g)に達して取り出されるよう調節される。たとえば単純なコップ(タンブラー)は1台の機械で1日に約10万個つくられ、タンク炉は数年間、休むことなく運転される。蛍光灯のような管ガラスは、溶けたガラスを回転する円筒の周囲に巻き付けて融着させた後、円筒内部にガスを送りながら円筒周囲のガラスを引っ張ることによって管状に成形する。「板ガラス」「ガラス繊維」についてはそれぞれの項目を参照。

[境野照雄・伊藤節郎]

加工

冷却されたガラスは、種々の形状に切断加工される。切断には、通常ダイヤモンドカッターが用いられるが、2000年代に入り、レーザーによる切断加工技術が普及し始めている。自動車のように、曲面をもつガラスは、再度ガラスをガラス転移点以上の温度まで加熱し、型に合わせて加工する。また、加熱後冷たい風を吹き付けて、強化加工が行われる。携帯電話や携帯用ディスプレーなどのガラスは薄いため風冷による強化ができず、イオン交換による化学強化が行われる(強化ガラスの項参照)。

[境野照雄・伊藤節郎]

絵付け

コップ、瓶などには有機顔料、無機顔料、金属塩などでスクリーン印刷などを利用して模様をつけ、有機顔料以外は500℃以上で焼き付けるので、耐久性が高い。

[境野照雄]

コーティング

瓶の表面の摩擦を減らし、微細な傷に基づく強度劣化を防ぐ目的で塩化スズなどの溶液を成形後の瓶に噴霧し、なまし工程を利用して焼き付けたり、また炭酸飲料瓶の破片の飛散を防止する目的で、有機高分子材料の被膜をつけたりすることが行われている。また、光の反射による損失を防ぐため、フッ化マグネシウムその他の薄膜を真空蒸着などによってレンズ表面につけることも広く行われており、効率をあげるため多層膜としたものをスペクトラコーティングとよぶことがある。建築物や自動車の窓用ガラスには紫外線や赤外線の透過を制御したり、あるいは装飾したりするために、さまざまな材料がコーティングされている。これらの大部分はスパッタ法(加速したイオンをターゲットに衝突させて原子や分子を放出させることにより、基板上へ薄い膜を形成する方法)によってコーティングされている。また、光触媒をコーティングした防汚、防曇、撥水(はっすい)ガラスなども知られている。エレクトロニクス用や太陽電池用のガラス基板には透明電導膜がコーティングされている。

[境野照雄・伊藤節郎]

新しいガラス

古くはるつぼ溶融でつくられていたガラスも、特殊ガラスや光通信用グラスファイバーのような新しいガラスが開発されるたびに、新しい合成法が考え出されてきた。これらの非溶融法による方法のうち、ゾル‐ゲル法とよばれる金属アルコキシドを原料とする方法は、溶融法に比して処理温度が低いこと、るつぼからの不純物混入がないことなどにより、新しい性能をもったガラスの合成法、とくに薄膜ガラスの作製法として利用されている。原理は、1種または数種の金属アルコキシドのアルコール溶液を加水分解してゲルとし、加・減圧、加熱等の処理で遊離アルコールや過剰の水を抜いて、金属酸化物の均質混合体である透明なガラスとすることである。たとえば溶融法では2000℃近い高温を必要とするシリカガラスは、ケイ素メトキシドSi(OCH3)4を出発物質として高純度のものが1000℃そこそこで合成できる特徴がある。化学蒸着法は、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウムなどの塩化物の気体を必要量の酸素と混じて高温で反応させて、器壁や種棒にそれぞれの酸化物ガラスを蒸着させる方法で、単成分のものも複成分のものもつくることができ、不純物を10億分の1単位にまで低減でき、光通信用グラスファイバー製法の出発点となっている。この方法は現在、半導体用プロセスで使われるステッパー(半導体製造装置)用のレンズやフォトマスクなど、超高純度シリカガラスの合成に広く利用されている。

 新しい製法が開発されれば、単にガラスの不純物含有率をいままでの限界以下に下げられるだけでなく、新しい化学組成のガラスをつくりだすことができる。透過率をはじめとする光学的性質や、高硬度、高強度、半導性などといった基本的物性の領域の拡大も可能となるので、エレクトロニクス、フォトニクス、バイオなどの分野で利用できる新しいガラス、金属、有機材料などとの複合材料等の範囲にまで発展することが期待される。

[境野照雄・伊藤節郎]

『日本セラミックス協会編『セラミック工学ハンドブック』第2版(2002・技報堂出版)』『作花済夫・伊藤節郎・幸塚広光・肥塚隆保・田部勢津久・平尾一之・由水常雄・和田正道編『ガラスの百科事典』(2007・朝倉書店)』『山根正之・安井至・和田正道・国分可紀・寺井良平・近藤敬・小川晋永著『ガラス工学ハンドブック』普及版(2010・朝倉書店)』


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改訂新版 世界大百科事典 「ガラス」の意味・わかりやすい解説

ガラス
glass

非晶質でかつガラス転移点をもつ無機固体をいう。結晶では原子配列が規則的であるのに対し,非晶質ではこの規則性がきわめて低く,ほんの数原子を超えた距離では無秩序になっている。ガラスもこのような非晶質の一種であり,一般的には,溶融体を結晶化させることなく固体状態まで冷却するという方法で作成される。この過程を,横軸に温度,縦軸に体積をとって表現したものが図である。すなわち融点以上の温度から融液を冷却すると,結晶が析出する場合には融点で大きな体積収縮を示し,この温度以下では,結晶の熱膨張率にしたがって体積が減少する。ガラスが生成する場合には,融点での体積収縮を示さずかつ融点以下でも液体に近い熱膨張率を示し,ある温度以下になってはじめて結晶に近い熱膨張率を示すようになる。この温度をガラス転移点と呼ぶ。融点とガラス転移点との間では,過冷却液体としての性質を示し,ガラス転移温度以下をガラス状態と呼び,固体としての性質を示す。ガラス状態になる物質は多く,最近では,冷却速度が十分速ければすべての物質はガラス化すると考えられている。有機高分子や,ある種の合金もガラス化するが,一般にガラスという言葉は無機物質に対して使用される。比較的容易にガラス化する物質をまとめると表1になる。実用上有用なガラスの大部分は酸化物ガラスであり,とくにSiO2,B2O3,P2O5を含有するものである。しかし,硫化物,セレン化物などのカルコゲナイド系ガラスや,最近では,フッ化物,塩化物のガラスなども実用化をめざしている。
有機ガラス

ガラスの基本的組成はNa2O-CaO-SiO2系であって,板ガラス,瓶ガラスなどに使用されている。この組成を基礎として,使用目的に応じた組成が開発され使用されてきた。またガラスを出発原料として取り扱い,後に述べる分相現象や結晶化を応用して新しい材料が作られてきた。表2におもなガラスの組成と用途を示す。

 板ガラスは安定に製造でき,かつ耐候性にすぐれていることの必要性から,この表2に示すような組成が選ばれている。ビーカーなどの理化学用ガラスは,耐薬品性,耐熱衝撃性が重要な要素である。一般にNa2Oなどのアルカリイオンを多量に含有するガラスはこれらの性質がよくないので,アルカリ量を減少させる必要があるのだが,そのために生ずるガラス化の困難さを解消するためにB2O3成分を加えたものが,理化学用ホウケイ酸ガラスである。封着ガラスのように低融点を目標として開発されたガラスは,SiO2成分を減らし,B2O3,PbOなどを大量に加えた組成になっている。テレビ等に使用されるブラウン管用ガラスは,X線吸収能が高く,かつ,電子線などによる着色の少ないものが使用される。X線吸収能は,一般に原子番号の大きな元素がすぐれているので,BaO,SrO,PbO等を大量に含有しているガラスが使用されている。光学ガラスはレンズ設計の自由度を増すために,さまざまな屈折率と分散の組合せを有するガラスが必要になる。古くから使用されてきたK2O-PbO-SiO2系ガラスでは,高屈折率低分散,低屈折率高分散のガラスが得られないため,前者のためにはLa2O3含有ガラス,後者にはフッ化物を含有するガラスが開発された。光の強さによって透過率が変化するフォトクロミックガラスは,ガラス中にハロゲン化銀微粒子を析出させたものであって,この微粒子が光化学的に分解し銀コロイドを生じ光吸収を起こす。したがって母ガラス組成としては,ハロゲン化銀の溶解度や,析出のしやすさなどが問題となる。結晶化ガラスあるいはデビトロセラミックスは,ガラスの加工性のよさを生かしたまま,耐熱性などの物性の改善を目標として開発されたものである。熱処理によって,目的の結晶が目的の大きさで析出するような組成が選択され,かつ核生成剤が加えられている。

ガラスの製造プロセスは,一般に原料配合→溶融→成形→徐冷→加工である。ガラスの主たる原料は,ケイ砂SiO2,ソーダ灰Na2CO3,石灰石CaCO3,鉛丹Pb3O4,ホウ酸B2O3,ホウ砂Na2B2O7などであり,そのほかに,溶融ガラス中の気泡を除去するための清澄剤,あるいは溶解促進剤として,硝酸ソーダNaNO3,硫酸ソーダNa2SO4,亜ヒ酸As2O3などが少量添加される。これらの粉体原料のほかに,カレットculletと称する同じ組成のくずガラスが加えられる。カレットは溶解を促進する作用をもつため,重要な原料の一つである。大量生産される板ガラス,瓶ガラスの溶融は,タンクがまによる連続溶融方式で,入口から原料を連続投入し,出口からはガラスを連続的に取り出している。一方,ある種の光学ガラスのように多品種少量生産のもの,あるいは工芸ガラスなどは,るつぼに原料を入れて炉中で溶融する方法がとられている。溶融のための熱源は重油バーナーが一般的であるが,最近では溶融ガラスに直接電流を通じジュール熱で加熱する電気溶融法も増加している。

 ガラスの成形には,引張成形,ロール成形,型吹成形,押型成形等が工業的に用いられている。成形開始時および終了時の粘度はそれぞれ1034ポアズ,107ポアズ程度である。成形はかなり温度勾配の大きな状態でなされるから,成形後そのまま冷却すると残留ひずみと応力によって割れることがある。たとえ破壊に至らない場合でも残留ひずみは物性値のゆらぎと直接関係するので,徐冷(なまし)を十分行う必要がある。加工は,切断・研磨などのように機械的に行う場合,エッチングのように化学的に行う場合があり,そのほかに,金属や異種ガラスとの接合といったプロセスも加工に含まれる。機械加工にはダイヤモンド工具,カーボランダム工具が用いられ,またさまざまな砥粒も用いられる。

ガラスは非晶質であるから,その原子配列は結晶の場合のように整然としたものではなく乱れている。X線・電子線・中性子線回折や,核磁気共鳴,常磁性共鳴,赤外吸収などのスペクトルから構造研究がなされている。古くは,〈ガラスは三次元に不規則に広がった網目状構造をもつ〉と単純に考えられていたが,現在では,全体としてはそのような不規則性をもつものの,数Å以下での構造の秩序はかなり高く,その構造も組成によってさまざまであるという考え方になりつつある。ガラスを構成している構造単位に関する理論はかなり古くからあり,ツァカリアーゼンW.H.Zachariasenが1932年に提案した構造説は,いまだに基本的には正しいとされている。それはMOxという組成の酸化物がガラス化するときの条件を構造的に示したもので,次のように表現できる。(1)陽イオンMの酸素配位数は3か4である。それが3のときにはMO3という三角形あるいはピラミッド型,4のときにはMO4という四面体が構造単位になる。(2)それぞれの酸素イオンは二つの陽イオンと結合する。(3)これらの構造単位は互いに頂点の酸素を共有して連結して三次元的に連続した網目構造を作り,稜や面を共有することはない。--実際,SiO2,GeO2,B2O3などの1成分からなるガラスは,これらの条件を満たしているものと考えられている。

 ガラスは各種の酸化物からなるが,それらのガラス構造中での役割を考慮し,次のように分類している。(1)網目形成酸化物 単独でツァカリアーゼンの条件を満足し,ガラスを形成するもの。酸化物としては共有結合性が強い化合物。SiO2,B2O3,P2O5,As2O3,Sb2O3,GeO2など。(2)網目修飾酸化物 イオン結合性の強い化合物で,むしろ網目構造を切断する作用をもつ。Li2O,Na2O,K2O,Rb2O,Cs2O,MgO,CaOなど。(3)中間酸化物 単独でガラス化することはないが,網目形成酸化物とともに網目を形成したり,場合によっては,修飾酸化物的挙動をするもの。PbO,Al2O3,TiO2,SnO2,ZrO2,BeOなど。

 以上のそれぞれの酸化物のガラス構造に対する寄与は次のように考えられている。Na2O等の網目修飾酸化物は,Si-O-Siという結合に対して,

のように作用し,余分な酸素を一つ導入することによって網目を切断する。このようにして生じた酸素を非架橋酸素という。中間酸化物はAl2O3を例にとると,

という形でSiと同様に四面体を作って網目中に入り,Na⁺イオンがその近傍に存在するという形をとる。このようにして,ガラス構造は金属原子の最近接,すなわち第一配位構造についてはかなり明確になっている。しかし,それ以遠の構造,とくに構造単位である多面体の連結様式や構造の不規則性については,やっと研究が始まったばかりであり,今後の課題である。

ガラスの密度は,アルキメデス法や重液法で測定される。板ガラスや瓶ガラスの密度はだいたい2.5g/cm3と考えてよいが,組成と熱履歴により変化する。密度は化学組成についての加成性が成立するといわれている。すなわち,ガラスを構成する酸化物の重量含有率をfMとすると,ガラスの密度dは近似的に次式で表せる。

vMは比体積で,それぞれの酸化物についての定数である。

ガラスを光学レンズ用に利用するときに最も重要な物性が屈折率と分散である。屈折率は第一近似として,構成イオンの分極率とその単位体積あたりの存在数との積を,すべての元素について加え合わせたものに比例する。一般に陰イオンのほうが分極率が大きく,したがって網目構成元素であるSi,B等の寄与は無視できるが,陽イオンでもイオン半径の大きなCs,Ba,La等の寄与は大きい。分散とは屈折率の波長依存性をいい,分散能あるいはその逆数であるアッベ数で測られる。可視光のうち,長波長(C線656.3nm)と短波長(F線486.1nm)における屈折率の差を平均分散と呼ぶ。これらの値はガラスの紫外吸収特性と関連しており,一般のPbO-SiO2系ガラスでは,屈折率を高めると分散能も増加する。

ガラス中に遷移元素などの着色成分が存在すると,可視光の一部が吸収されるため着色が起こる。このほかにも放射線によって色中心ができたり,ある種のコロイドがガラス中に存在することによっても着色する。近年,光ファイバーの実用化とともに,着色成分をほぼ完全に取り除いた純粋なSiO2ガラスの吸収が明らかになってきたが,赤外域では0.5dB/km以下の損失であり,ガラス自体はほぼ完全な透明体と考えてよい。着色の一例として遷移元素を添加したときの酸化物ガラスの色をまとめると,Fe2⁺(青緑),Fe3⁺(褐色),Co2⁺(ピンク,青),Cr3⁺(緑),Mo3⁺(だいだい),Ti3⁺(青),Cu2⁺(青),Mn2⁺(赤紫)などとなる(色ガラス)。

ガラスを成形したり,またひずみを除く際に重要な要素が粘性である。たとえば,ガラスのひずみ点とは,粘度が4×1014ポアズのときの温度をいい,この温度以下ではガラスは固体としての挙動を示し,ひずみを除去できない。徐冷点とは粘度が1013ポアズで,この温度にガラスを保持すると15分間でひずみが除去されることを意味している。軟化点とは粘度が4.5×107ポアズのときの値で,ガラスを成形加工する際の最低温度であって,この温度から104ポアズになる温度までを作業温度範囲と呼ぶ。ガラスの粘性は,ガラス組成によって大きく変化する。純粋のSiO2ガラスの粘性はきわめて大きく,これにNa⁺,K⁺等のアルカリイオンやCa2⁺,Ba2⁺等のアルカリ土類イオンを加えると粘性は急激に小さくなる。板ガラス等の実用ガラス組成であるNa2O-SiO2-CaO系ガラスに対しては,粘性も組成についての加成性が成立するとされている。

ガラスに引張応力を加えると,金属にみられるような塑性変形をほとんど示すことなく,弾性変形の限度内で破壊が起こる。ガラスの破壊強度は,原子間の結合力から予想されるいわゆる理論強度と比較すると1/10~1/100であり,その理由としては,ガラス表面には他の物質と接触したときに生成するきわめて微小なきず(通常〈グリフィスのきず〉と呼ばれる)が存在し,応力下ではその先端に応力集中が起こり,このきずが成長し,ついには全体的な破壊が起こると考えられている。ガラス繊維にして表面積を小さくすれば,このようなきずの存在確率も減少するから高い強度が得られ,これを強度のサイズ効果と呼ぶ。また,他の物質に接触しないようにきわめて注意深く測定されたガラス繊維の強度は,理論強度の数分の1に達し,これが本質的強度であると考えられている。

ガラスは一般的には電気的絶縁体と考えてよいが,高温では,ガラス中のアルカリイオンが移動することによるイオン伝導を示すようになる。Ca2⁺,Ba2⁺等のアルカリ土類イオンが添加されると,このイオン伝導はかなり抑えられる。またガラス中に2種類以上のアルカリイオンを導入することによっても,抵抗率を3~6けた高めることができる。この効果は混合アルカリ効果と呼ばれ,実用上重要な現象であるから研究例も多いが,その機構の完全な説明はなされていない。遷移金属元素を含むガラスは電子伝導性を示す。Fe2O3,MnO,V2O5等を含有するガラスはその例で,なかでもV2O5を大量に含有するガラスは,この種のガラス中で最も高い伝導度をもつ半導体である。硫化物,セレン化物,テルル化物からなるカルコゲナイド系ガラスは,電圧-電流特性が非直線性を示すこと,また光伝導を示すことから興味深い物質である。

ガラスは瓶用などの容器に使用されることから,化学的な安定性は高いものと考えがちである。しかし,ガラス組成によっては,水によってもはげしく侵食を受けるものもある。酸性の水溶液に接触しているガラスは,ガラス中のアルカリイオンと溶液中の水素イオンがイオン交換し侵食が進むと考えられている。したがってアルカリ成分が多くなると化学的耐久性が低下する。アルカリ性の水溶液に対しては,通常のケイ酸塩ガラスもかなり侵食される。この場合には,ガラスの骨格構造を構成しているSiO2が溶け出してくる。近年セメントの補強用にガラス繊維を使用した複合材料であるGRC(glass fiber reinforced cementの略)があるが,セメントは強アルカリ性のため通常のSiO2系ガラスではまったく使用できず,ZrO2を10~20%含有する特殊な耐アルカリ性ガラス繊維が用いられている。

液体どうしの場合,水とエチルアルコールのようにどのような混合比でも混ざり合う場合と,水とベンゼンのように分離してしまう場合がある。同様のことがガラスについてもあり,あるガラスを熱処理すると組成の異なる2種類のガラスに分離してしまうことがある。この現象を分相と呼ぶ。分相ガラスは2種類のガラスが互いに100~1000Åの大きさで共存した組織をもち,どちらか一方の相の化学的耐久性がいちじるしく低い場合には,酸で処理をすることによって一方の相のみを溶解し,多孔性ガラスを得ることができる。

ガラスは熱力学的には安定相ではなく,非平衡状態にあるから,条件によっては結晶化することがある。析出させる結晶の組成を選択することによって,耐熱性を向上させたり,電磁気的特性を与えたりすることが行われる。このようなガラスを一般に結晶化ガラス,デビトロセラミックスと呼ぶ。

 なお,ガラスの歴史については〈ガラス工芸〉の項を参照されたい。
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百科事典マイペディア 「ガラス」の意味・わかりやすい解説

ガラス

広義には,溶融状態にある液体を冷却するとき,一定の凝固点を示さずに凝固する非晶質の固体の総称。一般には,ケイ砂,ソーダ灰,石灰石,ホウ酸などを原料とし,高温で溶融し冷却したもので,透明で硬くもろい物質。有機高分子物質の場合は有機ガラスという。ふつう無機物の場合をさし,実用ガラスとしては大体酸化物ガラス(ケイ酸塩,ホウ酸塩,リン酸塩が主)に限られる。一般に硬くてもろく,加熱すると軟化し一定の融点を示さずに徐々に粘性を失って液体状態に移行。常温では吸水性,通水性,通気性などは全くなく,電気の絶縁体で,色ガラスや乳白ガラスなど特殊なものを除いては無色透明。鉛ガラスなど比重の大きいものは高屈折率,高分散性を示す。化学的にはかなり安定であるが,水,酸,アルカリ,大気中の炭酸ガスなどによって徐々に侵され,フッ化水素酸には著しく腐食される。酸化物ガラスの内部構造は三次元の不規則な網目構造。ガラスはその組成によりホウケイ酸ガラス鉛ガラス石英ガラス,無アルカリガラスなど,性質により硬質ガラス軟質ガラス色ガラス乳白ガラス強化ガラス合せガラス耐熱ガラスクリスタルガラスなど多くの種類に分類され,特殊用途のものに理化学用ガラス光学ガラスガラス繊維などがある。ガラスが初めてつくられたのはエジプトで前24―前22世紀ころといわれ,ルブラン法によるソーダの生産が始まってから近代的な工業として発展。製法には種々あるが,一般に原料を調合・溶融し,器物の場合は人の呼気を利用する宙吹き法や型吹き法,押型法などにより成形,びん類等は自動製びん機で量産,成形後徐冷を行う。ガラス製造の際に現れる欠陥には失透脈理,気泡,ひずみなどがある。→ニューガラス板ガラスガラス工業ガラス工芸
→関連項目セラミックス

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化学辞典 第2版 「ガラス」の解説

ガラス
ガラス
glass

過冷却液体が結晶化することなしに固化したもの,およびその状態.狭義には,二酸化ケイ素を主成分とし,ソーダ石灰やB2O3などの酸化物を副成分として含む非晶質の固体をさす.等方性.過冷却液体との境界温度をガラス転移点(Tg)とよび,熱膨張,粘度などの温度特性に屈曲を生じる.酸化物では,化学結合がイオン結合性と共有結合性との中間にあるSiO2,B2O3などがもっともガラス化傾向が大きく,これから離れるに従ってガラスになりにくい.構造的には,原子配列に2~3 nm を超える長距離の規則性がない.X線,電子線回折などで結晶性を証明できない物質を非晶質(またはアモルファス)とよぶ.この場合には,ガラス転移点(Tg)の存在を必要としない.実用的なものは,ケイ酸塩,ホウ酸塩,リン酸塩,およびその混合系のガラスが大部分を占めるが,このほかカルコゲン化物ガラスがその特異な物性からしだいに応用範囲を広げている.なお,ガラスの構造ガラスのひずみなどガラスの性質に関する事項,およびホウケイ酸ガラス色ガラス耐熱性ガラス光通信用ガラス繊維など,特殊な成分,機能,用途をもつガラスについてはそれぞれの項目を参照.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガラス」の意味・わかりやすい解説

ガラス
glass

(1) 溶融状態にある液体を急冷して,結晶させずに,等方性の無定形物質として固化させたもの。ガラス状態をとりうる物質としてはケイ酸塩ガラス,硫黄,セレンなど無機物のほかポリエステル,ポリエチレン,ポリスチレンなど有機物にもその例が多い。 (2) 普通はケイ酸塩ガラスのこと。その歴史は古く約四千数百年以前にさかのぼるといわれる。主原料はケイ砂,石灰石,ソーダ灰。限られた範囲ではガラスの比重,屈折率,熱膨張係数などについては成分酸化物または構成イオンのそれとの間に加成性がある。ガラスの構造は固体よりむしろ液体に近い。このためいろいろの酸化物 (たとえば酸化鉛,酸化ホウ素) を融解し,多種多様の用途に供するものが得られる。組成的にはソーダガラス (板ガラス,容器用) ,電気用鉛ガラス (ランプ,バルブ用) ,高屈折率鉛ガラス (光学ガラス,装飾品) ,ホウケイ酸ガラス (化学用) ,アルミナケイ酸塩ガラス (電気用,ガラス繊維用) に分類される。フッ化水素を除き化学薬品に侵されず安定である。

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岩石学辞典 「ガラス」の解説

ガラス

液体を結晶化させずに過冷却して,その粘度が固体と同じ程度に達した非晶質状態または無定形状態をガラス状態という.過冷却した液体では非常に細かい10-6~10-7cm程度の構造単位が不規則に集合した非晶質固体である.天然の珪酸塩熔融体が急冷すると固化してガラスとなる.しばしば熔岩の石基の粒間に形成され,SiO2成分に富む場合は熔岩全体がガラス質となる.黒曜岩や粗面岩などはその例である.ガラスは准安定状態で長時間経過すると内部に結晶が析出し,脱ガラス化して細かい結晶の集合体となる.天然ではデボン紀以前の古い時代の岩石にはガラス質のものは知られていない[Teall : 1888, George : 1924].

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リフォーム用語集 「ガラス」の解説

ガラス

ロート板ガラス(溶融金属にガラス素地を流してつくられた平滑でゆがみの少ない透明板ガラス)、安全ガラス(普通ガラスより強度が高く割れにくく、万一割れても飛散して人に重症を負わせないように配慮されたガラス。強化ガラス・合わせガラス製品に多い)、防音合わせガラスなど、さまざまな機能のガラスがある。→網入ガラス、合わせガラス、強化ガラス、複層ガラス(ペアガラス)、防火ガラス

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栄養・生化学辞典 「ガラス」の解説

ガラス

 食器などに使われる素材で,石灰,ケイ砂,炭酸ソーダなどを原料に製造.

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世界大百科事典(旧版)内のガラスの言及

【鏡】より

…ヨーロッパの諸言語で〈鏡の中に〉という表現と〈鏡を通して〉という表現と二つがあって,両者に区別がないという事実は,実体と映像,ひいては主体と客体との区別がそれほど明確ではなかったという事情を暗示しているかもしれない。また,英語(glass)でも,日本語でも(たとえば,凹面鏡と凸レンズ両方を意味しうる〈拡大鏡〉の用例),映して見る鏡と通して見るレンズとがどちらも〈鏡〉と呼ばれるのは,もう一つの暗示的なことである。とにかく人類は,鏡の向こう側の世界のふしぎな実体性に魅せられ,またそれを恐れ続けてきた。…

【グラス】より

…飲み物に用いるガラス製の食器で,英語glassはガラスと同義。コップという呼名もあるが,これはオランダ語kopに由来し,いまは平底の円筒型のものを指す。ガラス容器は繊細で色彩感に富み,また透明のものは中の溶体も見える特徴があり,多様なデザインと用途がある。一般的には材質はほとんどがソーダガラスであるが,カリクリスタルガラス,鉛クリスタルガラスも用いられる。後者は酸化鉛を含んだもので,含有率25%以上が上質とされ,カット加工をほどこしてカット・グラスとも呼ばれることが多い。…

【採光】より

…ゴシックの大聖堂の美しいステンドグラスをはめた高窓は,尖頭リブ・ボールトとフライング・バットレスという構造技術によって可能となった。近代建築を成立させている鉄やコンクリートは,さらにこのような構造的可能性の範囲を広げ,今日では,ガラスのカーテンウォール建築など,全面窓ともいえる建築構造を出現させている。 構造と並んで採光の発達に関する要因は,光の透過材料としてのガラスである。…

※「ガラス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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