日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ベスト・アンド・ブライテスト
べすとあんどぶらいてすと
The Best and the Brightest
デービッド・ハルバースタムの同名のノンフィクション・ベストセラー作品の名。1969年刊。ケネディ政権の閣僚や顧問・補佐官として結集したウィリアムおよびマクジョージ・バンディ兄弟、国防長官ロバート・マクナマラ、経済学者W・W・ロストウ、国務長官ディーン・ラスクらの人材はいずれもアメリカ上・中流家庭に生まれ、一流大学を出た文字どおり最高の知的エリートだったが、ベトナムでは道義的にも国益にも反する政策を立案・実行したことを、著者はこの本で痛烈に批判した。著者は、この知的エリート集団が自ら立案・実行したベトナム戦争の行き着く先の暗いことを見届けると、ロストウ、ラスクを除いてはいち早くハト派に転向したことをもあわせて皮肉っている。ハルバースタムはこの本の4年前、ベトナム戦争を法的、道義的に批判した『泥沼づくり』を出版しており、『ベスト・アンド・ブライテスト』への伏線をつくった。
[陸井三郎]
『浅野輔訳『ベスト&ブライテスト』全三巻(1976・サイマル出版会)』