日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロストウ」の意味・わかりやすい解説
ロストウ
ろすとう
Walt Whitman Rostow
(1916―2003)
アメリカの経済学者。ニューヨーク市に生まれる。1936年エール大学で学位取得。60年代に国家安全保障問題担当の大統領特別補佐官を務めるなど政策にかかわり、のちテキサス大学教授。経済学者としては、長期波動(コンドラチェフ循環)の観点から19世紀のイギリス経済史の研究を発表したのち、1960年の『経済成長の諸段階』The Stages of Economic Growthで脚光を浴びた。そこではマルクス理論に対抗する意図の下に、「伝統的社会→離陸のための先行条件期→離陸期→成熟への前進期→高度大衆消費時代」という経済発展段階説を提示した。彼の使った「離陸take off」という概念は、飛行機の離陸と同様に、経済が比較的高い成長を持続するための決定的段階をさすもので、以後この用語は広く使用されるようになった。ついで彼はコンドラチェフ循環の観点から石油危機下の世界経済の研究を進め、『大転換の時代』The World Economy(1976)などにおいて、同循環の発生原因を一次産品価格と主導的な工業製品価格との相対関係に求め、それはまた一次産品産出のための投資の変動によるとする見解を提出した。
[岸本重陳]
『木村健康他訳『経済成長の諸段階』(1961/増補版・1974・ダイヤモンド社)』▽『坂本二郎他訳『大転換の時代』(1982・ダイヤモンド社)』▽『坂本二郎・足立文彦訳『21世紀への出発』(1980・ダイヤモンド社)』